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アマゾン、ネット広告市場で2強からシェアを奪う 買い物アプリ動画広告はグーグルとFBへの脅威に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 「米国でインターネット広告市場を支配している米グーグルと米フェイスブック(FB)は、すでに巨人であるがゆえに、かつてのような高い成長率を維持することが困難。しかし、両社のシェアは依然高水準で推移しており、今後すぐさま大きく低下するようなことはない」

 こうしたレポートを、米国の市場調査会社eマーケターがまとめた。

ネット広告の2強は健在

 eマーケターは先のレポートで、昨年(2018年)のグーグルとフェイスブックの米国におけるシェアが、合計で57.7%となり、前年から1.5ポイント低下すると報告していた。

 ところが、その後のデータをまとめた結果、昨年の両社合計シェアは60.1%となり、前年から拡大した。グーグルはシェアの低下が予測よりも小幅にとどまり、フェイスブックは、伸びが予測を上回った、というのがその理由だ。

 ネット広告市場では、両社の勢力が巨大であることから、米政府が監視の目を光らせている。また昨今は、大量の個人データが流出した問題などもあり、利用者離れが懸念されている。

 しかし、eマーケターによると、広告主は依然、2社の巨大プラットフォームに魅力を感じており、効果的な広告媒体である両社を支持している。

米ネット広告、3社で7割のシェアへ

 ただ、2強のシェアは今年、59.3%となり、初めて低下に転じると、同eマーケター社は見ている。

 その要因は、米アマゾン・ドットコムの台頭だ。

 eマーケターによると、アマゾンの広告収入は今年、前年比で50%余り増え、シェアは昨年の6.8%から8.8%に拡大する見通し(図1)。

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 アマゾンの広告収入は、グーグルとフェイスブックに次いで多いが、2社との差は依然大きい。しかし、その広告事業は、今後、2社と4位以降のシェアを奪いながら、拡大していくという。

 これに伴い、米国のネット広告市場は、さらに集約が進むという。eマーケターは、2021年にもグーグル、フェイスブック、アマゾンの合計シェアが、ほぼ7割に達すると見ている。

ショッピングアプリ内で動画広告を展開へ

 一方、アマゾンは、モバイル向けショッピングアプリ内で、動画広告を始める計画だと、米ブルームバーグ通信が伝えている。

 これはテレビCMのような動画広告を、ショッピングアプリの検索結果画面に表示するというもので、アマゾンは数カ月間、米アップルの「iPhone」向けアプリで実験を行っている。

 同様の動画広告は、グーグルのモバイルOS「Android」向けアプリでも年内に始まる見通しだと、事情に詳しい関係者は話している。アマゾンは、動画広告が利用者の購買行動を妨げることにならないか、といったことを確認しながら、徐々に本格展開させていくのだという。

 米国eコマース市場におけるアマゾンの売上高シェアは、ほぼ5割に達する。また、ショッピングアプリ内の動画広告は、フェイスブックのニュースフィード内動画や、ユーチューブ動画内のCMと異なり、購買につながりやすく、広告主にとっては効率的な媒体。

 今後、アマゾンのネット広告事業には、さらなる収益拡大の機会がもたらされ、グーグルとフェイスブックへの脅威になるだろうと、ブルームバーグは伝えている。

  • (このコラムは「JBpress」2019年3月26日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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