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AIスピーカーは、ここまで売れている 世界規模の調査で明らかになったこと

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:つのだよしお/アフロ)

 シンガポールに本部を置く市場調査会社カナリスが、このほどまとめた最新レポートによると、昨年(2018年)1年間におけるAIスピーカー(ディスプレー搭載機も含む)の世界出荷台数は、7800万台だった。

アマゾンとグーグルのシェアが拮抗

 パソコンの昨年1年間における世界出荷台数は、2億5900万台だったが、AIスピーカーは、その3割に達した。

 また、スマートフォンの年間出荷台数は、14億400万台。これに比べるとAIスピーカーの市場規模は小さい。しかし出荷台数は、前年比125%増と、約2.3倍に拡大しており、市場は急成長していると、カナリスは指摘する。

 この市場は、一昨年まで米アマゾン・ドットコムが支配していた。しかし、昨年は年初から米グーグルとアマゾンが抜きつ抜かれつのシェア争いを繰り広げた。

 10〜12月期は、アマゾンがグーグルを抜いてトップに返り咲いたものの、年間を通じた両社のシェアは、わずか1ポイントの差しかない。

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 昨年の出荷台数は、アマゾンが2420万台で、シェアは31.1%。グーグルは2340万台で、シェアは30.0%。アマゾンの前年比伸び率は10.1%。これに対しグーグルは同109.6%(2倍超)と、急成長した。

中国メーカーが驚異的な伸び

 そして、この2社の後を追っているのが、アリババ・グループ(阿里巴巴集団)、シャオミ(小米科技)、バイドゥ(百度)の中国3社。

 このうち、アリババとシャオミのシェアは、いずれも約10%と、大きく拡大。出荷台数は、それぞれ前年比815.5%増、同8744.3%増と、驚異的な伸びを見せた。

 なお、別の調査会社である米ストラテジーアナリティクスは、昨年1年間のAIスピーカー世界出荷台数は8620万台だったと報告している。

 これによると、昨年10〜12月の出荷台数は3850万台で、この四半期だけで一昨年の年間出荷台数を上回った。AIスピーカーは、昨年の年末商戦で、最も人気の消費者テクノロジー製品だったという。

スマートディスプレー、市場成長の原動力に

 そして、カナリスとストラテジーアナリティクスは、「スマートディスプレー」とも呼ばれる、ディスプレー付きAIアシスタント端末に注目している。

 これには、アマゾンの「Echo Show」や、グーグルの「Home Hub」といった製品がある。これらの昨年1年間の出荷台数比率は8.3%(カナリスのデータ)。昨年10〜12月では、約10%だった(ストラテジーアナリティクスのデータ)。

 ストラテジーアナリティクスによると、スマートディスプレーの人気は、急速に高まっている。AIスピーカーに比べ、用途が広いからだという。

 スマートディスプレーの出荷台数は今後も伸び続け、市場成長の大きな原動力になると、同社は予測している。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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