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アップルに不満噴出、iPhoneのサプライヤー、度重なる生産計画の縮小を余儀なくされる

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:アフロ)

 米アップルによる、度重なるiPhoneの生産計画変更によって、組み立て工場や部品メーカーなどのサプライヤー(仕入れ・下請け業者)の間で、不満の声が噴出していると、昨年11月、米ウォールストリート・ジャーナルが伝え、他の海外メディアもこの話題を大きく取り上げた。

 そして、この事前報道を裏付けるかのように、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は1月2日、投資家に宛てた書簡で、昨年10~12月期の業績予想を下方修正すると発表した。

サプライチェーン全体に及ぶ影響

 これまでの米メディアの報道によると、アップルは、昨年発売した最新モデルの3機種について、いずれも当初予定の生産台数を減らした。

 また、価格が最も低いモデルについて、同社は一部のサプライヤーに対し、9月から今年2月にかけて約7000万台を生産するよう注文していた。しかし10月下旬、同社はこの台数を最大で3分の1減らすという新たな計画を告げた。

 11月第3週には、サプライヤー数社に対し、同モデルの生産台数を再度縮小すると告げた。生産計画見直しの影響は、アップルのサプライチェーン全体に及んだとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

iPhoneの需要予測、かつてよりも難しく

 これら一連の計画変更は、iPhoneの需要予測がかつてより、困難になっていることが背景にあるという。

 その要因の1つは、最新モデルが、従来の2機種から3機種に増えたこと。アップルは昨秋、以下の3モデルを発売した。

 (1)一昨年に発売した「iPhone X」の後継機となる「iPhone XS」

 (2)その上位バージョンで、画面サイズが過去最大の6.5インチとなった「iPhone XS Max」。こちらはiPhone XSと同じくOLED(有機EL)ディスプレーを備えている。

 (3)そして、6.1インチの液晶ディスプレーを搭載する下位バージョン「iPhone XR」である。

 このうちiPhone XSを除くモデルは、ディスプレーサイズが大きくなったことに伴い、販売価格が上昇した。

 これに加え、同社は旧モデルの販売も続けている。こうして製品種や価格帯が広がったことで、iPhoneの需要予測はいっそう困難なものになったという。

 アップルは昨年、iPhoneなどのハードウエア製品の販売台数の公表を取りやめると発表した。今後は、サプライヤー自らが需要を予測することも困難になると言われている。

スマホ市場の停滞も不満の理由

 スマートフォン市場は、かつてのような成長が見られなくなったが、このこともサプライヤーにとって打撃だとウォールストリート・ジャーナルは指摘。

 市場が成長しているときは、製造機械などにかかる巨額のコストは受注増によって吸収できる。しかし、iPhoneの年間販売台数は2015年のピーク時から6%減少しているという状況。

 こうした中、アップルは、台数の伸び悩みを、販売価格の上昇や、サービス事業の強化などで補うという戦略を取っている。しかし、多くのサプライヤーにとって、そのような道は閉ざされていると、同紙は伝えている。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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