アップルがiPhone販売台数の公表を取りやめる理由

(写真:つのだよしお/アフロ)

「今後はiPhone、iPad、Macの販売台数を公表しない」

 米アップルは先ごろの決算発表で、今後同社がiPhoneなどのハードウエア製品の販売台数を公表せず、その代わりに、ハードウエア事業とサービス事業それぞれの粗利益率を開示すると明らかにした。

 「製品構成がかつてないほど幅広いものになり、各製品カテゴリーの販売価格も広範にばらつくようになった。こうした中、販売台数は業績を表すための指標として関連性が低くなった」

 アップルのルカ ・マエストリ最高財務責任者(CFO)はこう説明した。

 またティム・クック最高経営責任者(CEO)は、「新しい価格戦略の下で進化したアップルの今の業績動向を、より的確に表すための措置」と説明。

 「店舗で買い物をする際、顧客がレジで最終的に示される数値は商品個数ではなく、合計金額だ」とも述べた。

アマゾンと同じ道をたどる

 同社は1980年代の上場間もないころから、業績動向の指標として、主要製品の販売台数を開示してきた。これに対し、米アマゾン・ドットコムは、自社ハードウエア製品の販売台数を開示しないことで知られている。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、こうしたアマゾンの方針について、かつて故スティーブ・ジョブズ氏は、「製品の売れ行きが良ければ、それを皆に教えたくなるだろう。アマゾンが台数を公表しないのは、売れ行きが芳しくないことの証しだ」と述べていた。

 しかし、それからほぼ10年後、アップルも同様の道をたどることになったと、同紙は伝えている。

 スマートフォンの販売台数が世界的に頭打ちになる中、アップルはiPhoneの販売価格を引き上げる戦略で、業績を向上させている。

 おそらくは、販売台数が示す印象が、アップルにとって好ましくないものになってきたということなのだろう。

 今年7~9月期におけるiPhoneの販売台数は4688万9000台で、前年同期から横ばい。これに対し、iPhoneの売上高は371億8500万ドルで、同29%の大幅増加となった。

 ドイツ・スタティスタのインフォグラフィックスを見ても、iPhoneの売上高伸び率がここ最近、販売台数の伸びを大きく上回っていることが分かる(図1)。

 今や「台数」は、ぱっとしない数値。これを開示することはアップルの不都合になる。それよりも業績の見栄えが良い「利益」に注目してほしい、と同社は考えているようだ。

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サービス事業、7~9月は過去最高の100億ドル

 スマートフォンの普及に伴い、顧客の買い替えサイクルが長期化したことが、台数伸び悩みの要因と見られている。そうした中、アップルはサービス事業に力を入れ、端末との相乗効果を狙っている。

 同社のサービス事業には、Apple Music、iTunes、App Store、iTunes Moviesなどがあるが、7~9月期におけるその売上高は、1年前から16%増え、99億8100万ドルと、ほぼ100億ドルに達し、過去最高を更新した(図2)。

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 また、その過去1年間(2018会計年度)の合計額は371億9000万ドルで、前年度から24%増加(図3)。サービス事業の売上高は、iPhoneと比べると規模は小さい、しかし、すでにMacやiPadのそれを上回り、iPhoneに次ぐ事業へと成長している。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、アップルはこの事業を2020年までに約500億ドルにまで拡大したい考えだ。

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 米モルガンスタンレーの推計によると、iPhoneを含む同社のハードウエア製品は現在、世界で13億台が稼働している。アップルはこれらの端末から年間、1台当たり30ドルを稼いでいる。

 アプリ販売や音楽サブスクリプションサービスなどによる収入だ。そしてアップルのサービス事業は今後5年間、同社全体の売り上げ増加分の約6割をもたらすようになると、モルガンスタンレーは予測している。

  • (このコラムは「JBpress」2018年11月6日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)