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アマゾンの研究開発費はダントツ、AppleやMSのほぼ2倍

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)(写真:ロイター/アフロ)

 先の会計年度(2017年)で、研究開発(R&D)費が最も多かった米企業は、アマゾン・ドットコムだった。

フォルクスワーゲンを超え、世界トップに

 米国の調査会社ファクトセットのデータをまとめた米リコード(Recode)によると、その金額は226億ドル(約2兆5027億円)で、時価総額世界1位であるアップルのほぼ2倍となっている。

 アマゾンは近年、研究開発費を増やしている。その一昨年(2016年)の金額は161億ドルだった。

 同年10〜12月期、アマゾンの研究開発費は、ドイツ・フォルクスワーゲンのそれを上回り、同社は、世界で最も研究開発に費用を投じる企業になった(ブルームバーグの記事)。

 企業の研究開発費は、かつて、製薬や自動車といった業界が最も多かったが、今のアマゾンはそれらを上回っている。そして、2017年、アマゾンの費用は、さらに4割増えた。

 アマゾンは、これらの費用を何に使っているのだろうか。

 リコードの記事はこれについて、クラウドコンピューティングの「Amazon Web Services」や、AI(人工知能)アシスタントサービスの「Alexa」、そして、コンピューター・ビジョン(視覚情報処理)といった技術分野を挙げている。

 このうち、コンピューター・ビジョンは、同社が今年1月、米シアトルで本格営業を始めた、レジ精算不要のコンビニエンスストア「Amazon Go」の基盤技術となっている。

上位5社はすべてテクノロジー企業

 ファクトセットのデータをさらに見てみる。

 研究開発費ランキングの2位から5位までは、グーグルの持株会社であるアルファベット、半導体大手のインテル、ソフトウエア大手のマイクロソフトアップルの順。いずれも米国の名だたるテクノロジー企業だ。

 それぞれの金額を見ると、アルファベットは166億ドルで、アマゾンの7割程度。

 このあと、インテルの131億ドル、マイクロソフトの123億ドル、アップルの116億ドルと続いている。

 前述したとおり、アマゾンの研究開発費は、マイクロソフトやアップルのほぼ2倍になっていることが分かる。

 そして、これら上位テクノロジー企業の研究開発費は、毎年増え続けている(リコードの2017年9月1日付記事)。

 この話題について伝えている米BGRによると、このうちアップルは、比較的多くの費用を投じない企業として知られていた。だが、同社も近年は金額を増やしており、昨年度は2013年度の2倍以上を投じている。

上位16社中、10社がテクノロジー企業

 もう1つ興味深いのは、研究開発費上位16社の中に、テクノロジー企業が10社入っていること。

 上述した5社以外には、フェイスブック(9位)、オラクル(12位)、シスコシステムズ(13位)、クアルコム(15位)、IBM(16位)が、ランキングに名を連ねている。

 これについてBGRは、「たとえそれが、新製品や新サービスといった成果物につながらなくても、彼らは毎年、巨額の資金を投資し続ける」と、伝えている。

 「猛烈な速度で進むテクノロジー業界で生き残るためには、強大な研究開発力が、不可欠であることを、彼らは知っている」のだという。

(このコラムは「JBpress」2018年4月12日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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