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右肩下がりのPC市場、生き残れるのは法人に強い3社とアップル

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米国の市場調査会社、ガートナーがこのほど公表した世界のパソコン市場に関するリポートによると、今年(2017年)1〜3月の世界出荷台数(速報値)は6218万台となり、1年前の同じ時期から2.4%減少した。

パソコンの四半期出荷台数が6300万台を下回るのは、2007年以来初めてのことという。また米ベンチャービートは、パソコン世界出荷台数の前年割れは、これで10四半期続いたと報じている。

消費者向けが低迷

ガートナーによると、パソコン市場では、法人向け製品が穏やかな成長を見せているが、消費者向けの需要が減少しており、これが市場全体の低迷につながっている。

消費者は依然として買い替えを控えており、一部の消費者はパソコンの購入をやめてしまった。一方、法人分野では依然パソコンは重要な機器であり、彼らの仕事における中心的な機器であり続けている。

法人分野がカギ握る

こうした状況では、「法人分野で確固たる地位を保つことが、パソコン市場の継続的な成長を維持していく上で重要になる。法人分野における勝者が、最終的にこの縮小していく市場の中で生き残れる」と、ガートナーの主席アナリスト、北川美佳子氏は指摘している。

また同氏は、「法人市場で強い存在感を示せていないメーカーは、今後大きな問題に直面し、5年のうちに市場から撤退せざるを得ない状況になる」とも指摘している。

ただ、同氏によると、そうした状況でも特定分野向けの製品を開発するメーカーは今後も存在し続ける。同氏はその例として、ゲーム用パソコンや、作業現場などで利用される堅牢仕様のノートパソコンといった分野を挙げている。

上位3社以外の商機は限定的

今年1〜3月のメーカー別出荷台数を見ると、上位6社は、中国レノボ・グループ(聯想集団)、米HP Inc.、米デル、台湾エイスース(華碩電脳)、米アップル、台湾エイサー(宏碁)の順。

それぞれの出荷台数は、レノボが1237万7000台、HPが1211万8000台、デルが935万1000台、エイスースが454万7000台、アップルが421万7000台、エイサーが419万台となった。

ガートナーによると、このうち上位3社のレノボ、HP、デルの間では競争が激化している。特にレノボとHPのシェアはそれぞれ19.9%、19.5%と拮抗(きっこう)しており、両社は実質的に互角。これにデルが15.0%のシェアで迫っている。

こうした状況についてガートナーは、「パソコン市場における商機は、今後上位3社以外のメーカーにとって限定的なものになる」と指摘。ただし、アップルは特定の市場で堅固な顧客基盤を持っており、この競争構図の例外になるともガートナーは指摘している。

JBpress:2017年4月13日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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