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サムスン、スマホの出荷台数大幅に減らす計画、目的は“変化する市場環境への対応”、低価格端末に注力へ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

韓国日報が発行する英字新聞、コリア・タイムズの報道によると、サムスン電子は2016年に出荷するスマートフォンの台数を約12%減らす計画という。

12%減、世界市場への影響大

この出荷計画の見直しは、同社モバイル事業に大規模なリストラがあるといったことではなく、単に市場動向の変化に対応するための措置だと、事情に詳しい関係者は話している。

ただ、サムスンは年間3億台以上のスマートフォンを出荷している業界最大手。その12%とは、業界3位である中国ファーウェイ(華為技術)の3カ月分の出荷台数を優に上回る。

もしコリア・タイムズの報道のとおり、この計画が実施されれば、2016年の世界スマートフォン市場は、規模が大幅に縮小する可能性がある。一方でサムスンは今後、低価格端末の分野に力を入れていくという。

実はこうした観測はこれまでにも出ていた。

例えば米国の市場調査会社IDCが先頃公表したリポートによると、2015年の世界スマートフォン出荷台数は14億3000万台となり、その前年比伸び率は9.8%にとどまる見通し。年間出荷台数の伸びが1桁になるのは同社が統計を取り始めて以来初めてのことという。

スマートフォン市場の成長はこれまで中国、インド、インドネシアといった新興国市場の高い伸びに支えられてきた。しかし世界最大市場の中国がすでに買い替え需要に支えられる状況となっており、これまでのような急成長は見込めない。

IDCによると中国における2015年の出荷台数伸び率は1桁台の前半にとどまる見通し。そうした中、中東・アフリカ(MEA)地域の伸び率はほぼ50%と、インドやインドネシアのそれを上回るとIDCは見ている。

中国市場が減速する中、アフリカなどで攻勢

前述のコリア・タイムズの記事はサムスンの計画について詳細な内容を伝えていない。だが、同社はこうした市場動向を踏まえ、アフリカなどの新興国でフィーチャーフォン(従来型携帯電話)を含む低価格端末に力を入れていく考えのようだ。

IDCの別のリポートを見ると、2015年7〜9月期におけるサムスンのスマートフォン出荷台数は8450万台で、米アップルの4800万台を大きく引き離した。

IDCによると、サムスンは「Galaxy Core」「Galaxy Grand Prime」「Galaxy Jシリーズ」といった200ドル未満の低価格端末が新興国市場で出荷台数を伸ばしているという。

その一方で同社の出荷台数伸び率は6.1%にとどまり、業界全体の6.8%を下回っている。これに対しアップルは22.2%と急伸している。

失敗許されない、2016年投入の旗艦モデル

サムスンのスマートフォンについては、先頃、同社が新たな旗艦モデルの開発を進めているとも伝えられた。米国や日本などの先進国市場では、こうした高価格端末に力を入れ、アップルとの競争に勝ちたいとサムスンは考えているようだ。

米ウォールストリート・ジャーナルなどの報道によると、サムスンが2016年3月に発売すると見られている新製品は「Galaxy S7」と呼ばれている。このS7シリーズには前モデルの「Galaxy S6」同様、曲面ディスプレイの「Galaxy S7 edge」も用意される見通しだ。

サムスンは2015年4月に「Galaxy S6」と「Galaxy S6 edge」を発売したが、需要を見誤り、S6が在庫余剰、S6 edgeが在庫不足に陥った。結果として同社のモバイル事業の利益は2年連続で前年実績を下回った。

こうした経緯があることから、同社にとってGalaxy S7シリーズを成功させることは極めて重要だとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

JBpress:2015年12月29日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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