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「Apple Watch」は成功しているの? 出荷台数、iPadとiPhoneの当初実績上回る

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
サンフランシスコで開催されたイベントの会場で展示された「Apple Watch」(写真:ロイター/アフロ)

米ウォールストリート・ジャーナルは、米アップルが今年4月に発売した腕時計型ウエアラブル端末「Apple Watch」について、その売れ行きは「これまでのところ、かなり成功しているのではないか」と伝えている。

4〜6月期の出荷台数360万台

同紙が引用した米IDCのリポートによると、今年4〜6月期におけるウエアラブル機器の世界出荷台数は1810万台で、1年前の3.2倍(223.2%増)になった。

同四半期のメーカー別出荷台数は、米フィットビット(Fitbit)の440万台が最も多く、これにアップルのApple Watchが360万台で次ぎ、このあと中国シャオミ(小米科技)の310万台、米ガーミン(Garmin)の70万台、韓国サムスン電子の60万台と続いた。

このアップルの数字をどう見るかは様々だ。例えば同社の「iPad」は需要が低下してきたと言われるが、それでもこの4〜6月期は1090万台売れた。また「iPhone」は同四半期に4753万台売れており、昨年10〜12月期には7447万台と、四半期実績の記録を更新した。

「不成功と言うのには無理がある」

だが、ウォールストリート・ジャーナルは、この360万台はアップルが2010年4月に初代iPadを発売した際の最初の四半期(同年4〜6月期)の販売台数327万台よりも多いと伝えている。

また2007年6月末に初代iPhoneを発売した際の同年4〜6月期の販売台数は27万台、同年7〜9月期は112万台だった。Apple WatchはiPadやiPhoneよりも好調なスタートを切っているという。

同紙によるとApple Watchには、その発売以来数々の否定的な意見が聞かれた。例えばある部品供給業者は主要部品の生産量が期待していたほどではないと述べ、不安をあおったという。

また、あまり高く評価されないレビュー記事が出たことや、アップルの他の製品のような熱狂的な発売イベントがなかったことで、Apple Watchはこれまでのような大きな製品カテゴリーと言えるのかといった疑問の声も聞かれたという。

しかし、この端末を不成功と言うのには無理があるとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。仮にこれまで販売されたすべてのApple Watchが最も安い349ドルのモデルだったとしても、その売上高は10億ドルを超える。

こうした販売実績はアップル以外の企業であれば紛れもない成功と言われるところ。アップルの場合、自ら設定した高い目標によって、期待がとてつもなく膨らんでいると、同紙は伝えている。

アップル、「スマート型」ですでに首位

なお前述のIDCのリポートも、Apple Watchは成功していると分析している。

IDCによると今年4〜6月期、首位のフィットビットの出荷台数は1年前から158.8%増えたが、シェアは同30.4%から24.3%に低下した。一方Apple Watchが発売されたのは4月24日だったため、その前年比伸び率のデータはないが、アップルのシェアは19.9%となった。

これについてIDCのアナリストは「アップルは一気に業界リーダーであるフィットビットを攻撃できる距離に入った」とコメントしている。

またIDCは、フィットビットの出荷台数はアップルを上回ったが、フィットビットの製品が自社開発アプリのみに対応する「ベーシック型」であることに注目すべきだとも指摘している。

これに対しApple Watchは他社企業のアプリが利用できる「スマート型」。今年4〜6月期に出荷されたスマート型ウエアラブルの3台に2台はApple Watchであり、アップルはすでにこの市場分野で他社を大きく引き離しているという。

IDCによると、ウエアラブル機器全体に占めるベーシック型の比率は今後数年で縮小すると見られている。アップルはウエアラブル市場全体でも首位に立つ可能性があるとIDCは予測している。

JBpress:2015年9月1日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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