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「Apple Watch」の目玉機能は医療・健康アプリ、4月の発売に向け関連アプリの開発着々

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

今年4月の発売が見込まれている米アップルの腕時計型ウエアラブル端末「Apple Watch」は、その目玉機能となる医療・健康関連アプリの開発が着々と進んでいるという。

医療・健康アプリの開発が容易に

米ウォールストリート・ジャーナルの報道よると、米医療機器メーカーのデクスコム(DexCom)は現在、糖尿病患者の血糖値データをApple Watchに表示するアプリを開発している。

こうした医療・健康関連のアプリについては、これまで米食品医薬品局(FDA)が厳しい審査基準を設けており、承認までに時間がかかっていたが、このほどFDAはその規制を緩和し、認可制から登録制に変更した。

これにより、デクスコムをはじめとする多くの企業はアプリの開発や市場投入が容易になり、今後Apple Watchの医療・健康機能が短期間で拡充するのではないかと見られている。

きっかけは糖尿病の子どもを持つ有志の行動

ウォールストリート・ジャーナルによると、規制緩和の発端となったのは、1型糖尿病(小児糖尿病)の子どもを持つソフトウエア開発者など有志の行動。

デクスコムは、髪の毛ほどの幅の血糖センサーを皮下に埋め込み、5分ごとに患者の血糖値を測る機器を手がけているが、この機器は、最高水準の審査を要する「クラスIII」に分類されている。このため、そのアプリに対する審査も厳しく、認可されるまでに相当の時間を要していた。

そこで、有志らはこの機器と連携する「NightScout」というアプリをインターネットを介して共同開発し、配布した。このアプリでは、デクスコムの機器で測定した子どもの血糖値をネットにアップロードし、親がスマートフォンやタブレット端末などで遠隔から確認できる。

ウォールストリート・ジャーナルによると、米国には約2900万人の糖尿病患者がおり、そのうちの5〜10%が1型糖尿病。これは主に自己免疫によって起こる病気。

体内でインスリンを作ることができず、血液中のブドウ糖をエネルギーに変えられない。そのため患者は常に血糖値を測り、毎日数回インスリンを投与しなければならない。

NightScoutというアプリは、FDAの承認を得ずに配布したが、 FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア上で話題を呼び、利用が広がった。1型糖尿病の子どもを抱えるこうした有志らの切実な訴えと行動、それに対する人々の支持などを受け、FDAは今年1月、方針転換したという。

ウォールストリート・ジャーナルによると、デクスコムの血糖測定機器は依然「クラスIII」に分類されている。だが、現在同社が開発中のApple Watch用アプリは、市販や一般配布に際し、認可を受ける必要がなくなった。

同社はすでにこの連携アプリの試作版を披露しているが、Apple Watchが発売される今年4月には正式版の準備が整うと、説明している。

米主要病院、アップルの「HealthKit」試験導入

マックワールドやバリューウォークなどの米メディアは、この報道を受け、今後医療や健康関連アプリの開発が促進されると伝えている。

英ロイター通信は先頃、米国の主要23病院のうち14病院がアップルの「ヘルスキット(HealthKit)」を試験導入していると伝えた。

このヘルスキットはフィットネス機器や健康管理のアプリからデータを集めて共有する仕組み。これとデータを管理するiOS用アプリ「ヘルスケア(Health)」とを組み合わせることで、患者は自身のデータをApple WatchやiPhoneで確認したり、医師から通知を受けたりできるようになる。

アップルは昨年11月、ソフトウエアセット「WatchKit」の提供を始めており、現在様々な開発者がこれを使ってApple Watch用アプリの開発を着々と進めている。医療や健康管理データを記録するアプリはApple Watchの大きな魅力になるだろうと、マックワールドは伝えている。

JBpress:2015年2月12日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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