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シャオミはなぜ、低価格スマホで利益を出せるのか? 昨年の純利益は84%増、今年は75%増見込む

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

ウォールストリート・ジャーナルによると、中国のスマートフォンメーカー、シャオミ(小米科技=Xiaomi)は、低価格の端末を販売しながらも着実に利益を出しているという。

「低価格端末メーカーでは、まれに見る高収益」

昨年の純利益は34億6000万元(5億6600万米ドル)で、2012年の18億8000万元から84%増加した。また売上高は2倍以上の270億元となったという。

シャオミは非上場企業で財務情報を開示していない。そうした中、同社は海外進出や企業買収で事業を拡大しようとしており、このほど10億ドルを借り入れるために銀行に書類を提出した。ウォールストリート・ジャーナルはその書類を入手したという。

この書類には、事業見通しに関する記述もあり、同社は今年の純利益が前年比で75%増加すると見込んでいる。

低価格スマートフォンを販売する多くのメーカーが採算を取ることに苦戦している中、シャオミの事業はまれに見る高収益だとウォールストリート・ジャーナルは報じている。

シャオミ、世界スマホ市場でついに3位

シャオミは高性能、低価格のスマートフォンを手がけるメーカーとして知られる。同社の創業は2010年。セキュリティーソフトやオフィスソフトを手がけるキングソフト(金山軟件)の元最高経営責任者(CEO)、雷軍(Lei Jun)氏がほかの共同創業者とともに北京で創業した。

同社は創業4年の新興企業でありながら、最近は大躍進が続いている。英国の市場調査会社カナリスによると、今年4〜6月期、シャオミの中国におけるスマートフォンの出荷台数は、前年同期比240%増の1500万台となり、同社は初めて韓国サムスン電子を抜いて1位になった。

また米IDCがまとめた最新リポートによると、今年7〜9月期の世界スマートフォン市場でシャオミの出荷台数は前年同期比211.3%増の1730万台となり、3位に浮上した。シャオミはそれまでメーカー別ランキングでトップ5圏外だったが、この7〜9月期は一気に3位に躍り出たという。

ネットを活用したマーケティング戦略

IDCは、その躍進のカギとなったのが、最新旗艦モデル「Mi 4(小米手机 4)」だと指摘している。

ウォールストリート・ジャーナルによると、このモデルの中国における販売価格は1999元(327米ドル)から。またシャオミには廉価モデル「Redmi 1S(紅米手机1S)」もあり、こちらは699元(114米ドル)からとなっている。

同紙によると、これまでアナリストらは、シャオミがこうした低価格端末で利益を犠牲にしながら市場シェア伸ばしていると見ていた。だが今回入手した書類で、実はそうではなく、同社は高い収益力を持つ企業であることが分かったという。

シャオミの販売戦略の特徴の1つは、小売店舗を持たず、注文はインターネットのみで受け付けるというもの。販売店を通さず流通費などのコストを抑え、低価格化を実現している。

ウォールストリート・ジャーナルはこれに加え、同社はマーケティングや製品開発においてもインターネットを活用していると伝えている。

例えば大手企業のように、テレビなどで宣伝せず、代わりにユーザーが不満や要望などを書き込めるネット上のフォーラムやソーシャルメディアをマーケティングの主軸としている。

またユーザーの意見をソフトウエアや機能に反映させることで忠実なファン層を得ている。この戦略がユーザーの保持や、マーケティング費用の削減につながっているという。

競争はますます激化、シャオミは世界市場で4位に後退か?

前述の書類によると、2012年にシャオミはマーケティングと販売に4億1600万元を使った。これはその年の売上高の3.9%に当たる。また昨年は8億7600万元を使ったが、その売上高に占める比率は3.2%だった。

米ストラテジー・アナリティクスのアナリストはこれについて、「(シャオミは)出荷台数と利益を同時に伸ばすことに成功している」などとコメントしている。

ただ、その一方でこのアナリストは、「中国のスマートフォン市場が飽和状態に達しつつあり、競争が激化する中、今後この利益率を維持できるかどうかは分からない」とも指摘している。

そうした中、シャオミはシンガポールやインドを手始めに本格的な国外展開を進めており、今後はマレーシア、インドネシア、タイなどへの進出も目指している。

IDCによると、今年7〜9月期における世界スマートフォン市場のメーカー別出荷台数シェアは、サムスンが23.8%で首位を維持した。2位は米アップルで、そのシェアは12.0%。これにシャオミが5.3%で続き、4位以降は、中国レノボ・グループ(聯想集団)の5.2%と、韓国LGエレクトロニクスの5.1%だった。

このうちレノボは10月30日、米グーグル傘下の米モトローラ・モビリティの買収を完了したと発表した。

ストラテジー・アナリティクスは、これによりレノボのシェアは8%となり、同社は世界3位のスマートフォンメーカーになると予測している。

JBpress:2014年11月7日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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