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米ヤフー、メイヤーCEO就任から1年 今は改革の途中、結果は2014年以降に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米ヤフーではこの17日に、マリッサ・メイヤー最高経営責任者(CEO)が就任してから1年が経った。同氏はこれまでの間、従業員の意識改革や企業買収などの施策を講じて経営改革に取り組んできた。だが16日に発表した4〜6月期の決算を見ると、同社の業績改善にはまだ少し時間がかかりそうだと言われてる。

ヤフーが16日に発表した4〜6月期の決算は、売上高が11億3500万ドルとなり、1年前から7%減少した。

「TAC」と呼ばれる提携パートナーに支払うトラフィック獲得コストを除いた実質売上高は10億7092万ドルで、こちらは1%減。

ヤフーの売上高はほぼ8割が広告収入だが、これが1年前から約10%減少。このうち検索広告の実質売上高は同5%増と比較的好調だったが、ディスプレー広告は同11%減少した。

世界のオンライン広告市場は20%の伸び、ヤフーは2.9%

市場調査会社の米eマーケターのリポートによると、昨年1年間の世界オンライン広告市場の売上高は1040億4000万ドルで、前年から20.3%増加した。

この中で業界のトップは米グーグル。同社の広告収入は前年比18%増の327億3000万ドルで、この後米フェイスブックの42億8000万ドルが続き、ヤフーは35億1000万ドルで第3位となっている。

しかし、フェイスブックの前年比伸び率が35.8%だったのに対し、ヤフーのそれは2.9%と業界平均を大きく下回っている。米ニューヨーク・タイムズによると、ヤフーのディスプレイ広告収入は過去2年間のすべての四半期で減少している。

そして、この4〜6月期の決算を見ても、同社のディスプレイ広告収入は前年同期比12%減、広告販売数は同約2%減少し、単価は約12%低下した。

メイヤーCEO、社員の改革が最優先事項

こうして見ると、メイヤーCEOの経営改革はまだ道半ばと言わざるを得ないようだ。ニューヨーク・タイムズによると同氏は今回の決算発表で投資家に対し、今しばらく辛抱するよう求めたという。

これまで手がけてきた新規サービスや改良サービスが業績に顕著に反映されるのは2014年以降と同氏は考えている。広告事業の立て直しには時間を要すると同氏は投資家に説明している。

ただその一方で今のヤフーは確かに変化していると言えそうだ。

メイヤーCEOは就任以降のこの1年間で、合計17件の買収を行った。これらのほとんどは、創業者や開発チームといった人材の獲得を目的とする「アクイ・ハイア」と呼ばれる買収。同氏はこれを通じて社内に若い起業家精神を吹き込みたいと考えている。

また同氏は、社員に最新のスマートフォンを支給し、社員食堂を無料化した。在宅勤務を禁止し、「立ち止まらず、重要な仕事をほしい」とも呼びかけた。これらはすべて、社員の士気を高めることが狙いと言われている。

同氏にとってのヤフーの改革とはまず、社員の改革。その次にサービスの改革が来るという。そして今は前者に注力している段階。

これらが奏功したのか、この1年間のヤフーでは、離職率が大幅に減少しており、新規雇用の12%はヤフーの元社員となっている。社員の間ではかつてのような悲観的な考え方はなくなってきたとニューヨーク・タイムズは伝えている。

JBpress:2013年7月18日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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