ウクライナ軍の損害状況と反転攻勢

7月4日付けのロシア国営ノーヴォスチ通信に、ウクライナ軍の損害状況が掲載されていたので、参考資料として翻訳の上、転載する。

ウクライナ軍の損害

人的損害(ウクライナ国防安全保障会議)

死者:200名

負傷者:619名

捕虜:29名

装備(5月2日から7月1日まで)

An-26中型輸送機:1機

An-30偵察機:1機

Il-76大型輸送機:1機

Su-25攻撃機:4機

Su-24戦闘爆撃機:3機

無人偵察機:4機

ヘリコプター(Mi-8/17輸送ヘリ、Mi-24武装ヘリ):18機

T-64戦車:11両

ノーナ自走砲:2両

グラード多連装ロケット:3両

ウーラガン多連装ロケット:5両

D-30榴弾砲:3門

歩兵戦闘車:18両

空挺戦闘車:30両

装甲兵員輸送車:55両

以上のように、ウクライナ軍にかなりの損害が出ていることが分かる。特に武装勢力に対しては正規軍であるウクライナ軍の航空戦力は大きな優位であるが、ロシアが供給していると見られるイグラ携帯型地対空ミサイルによって航空機に相当の損害が出ているのが目に付く。

火器管制システムのない携帯型地対空ミサイルでこれだけの戦果を出しているとなると、ミサイルだけでなく、ロシア側がミサイル単体のみならず、親露派に対して訓練や、操作要員そのものを送り込んでいる可能性も考えられよう。

また、ウクライナの『キエフ・ポスト』7月5日付けによると、ロシアはルガンスク州に新たに戦車3両、グラード多連装ロケット3両、装甲車数両を送り込んだという。

しかし、7月5日以降、ウクライナ軍は親露派武装勢力に対して一大攻勢に転じた。これによって親露派勢力はドネツクのスラビャンスクやクラマトルスクからの撤退を余儀なくされるなど(5日の戦闘についてはこちらの拙稿も参照)、優位に立ちつつある。ウクライナ国防安全保障会議によれば、親露派5日だけで数百名の死者を出したという。

親露派はドネツク中心部に終結して態勢の建て直しを図っていると伝えられるが、ドネツクの親露派「ドネツク人民共和国」のストレリコフ国防相は以前、ロシアからの大規模援助無しでは1ヶ月と保たないと認めており、このままではウクライナ軍の優位は揺るがないだろう。

問題は、ロシアの出方だ。

ロシアのプーチン大統領は6月24日、上院から得たウクライナへの軍事介入権を返上する意向を表明しているものの、このまま親露派の劣勢が続き、最終的にポロシェンコ政権が東部を平定してしまえば、ロシアが求めるウクライナの「連邦化」(ただし、東部諸州に外交権まで付与するというもので、事実上の国家分裂を意味する)を諦めざるをえなくなると思われる。このため、情勢如何によっては再びロシア軍を国境付近に増強したり、親露派への軍事援助を増強することも考えられよう。