ロシアがグリーンピースに資金援助? ウクライナとのガス紛争の影でロシアの秘密工作疑惑が浮上

 先週、NATOのフォグ・ラスムセン事務総長が英国のシンクタンク「チャタム・ハウス」で行った発言が波紋を広げている。

 ロシアの特殊機関がシェール・ガス採掘に反対する環境団体を秘密裏に資金支援しているというものだ。

 以下、発言を引用する。

「ロシアは、その洗練された情報・情報攪乱工作(sophisticated information and disinformation operation)の一環としていわゆる非政府組織-シェール・ガスに反対する環境団体に関与しているという関係者と私は面会した。欧州をロシアからのガス輸入に依存させておくためだ」

 ラスムセン事務総長はこれ以上の詳細については明らかにしておらず、「あくまで私の解釈」と釈明し、NATO事務局も「事務総長の個人的意見であってNATOとしての公式見解ではない」などと火消しに躍起になっているが、波紋を呼びそうだ。

 しかも、NATO事務局側もラスムセン事務総長の発言は「個人的意見」であるとしつつ、その内容自体を否定しているわけではない。

 英『ガーディアン』紙によれば、NATO広報は同紙の取材に対して次のようにも述べている。

「加盟国首脳との間で突っ込んだ議論した訳ではないが、ロシアは影響圏を再構築するため、硬軟のパワーを織り交ぜて使ってきた。そこにはエネルギーを含む多様な問題についての情報攪乱も含まれる。

 一般論として、ロシアがエネルギー供給を欧州諸国に対して圧力を掛ける手段として使用しうるポテンシャルは懸念の対象だ。いかなる国家も供給や価格問題を圧迫の手段として用いるべきではない」

 特に疑惑の対象となっているのは、国際的環境団体「グリーンピース」だ。これまでもグリーンピースはシェール・ガスやシェール・オイルの生産が環境を破壊するとして反対を訴えてきた。

 しかもグリーンピースといえば北極海でのロシアの石油採掘に反対し、活動家が採掘リグに侵入してロシア当局に逮捕されたこともある(ちなみにその際に使用されたグリーンピースの保有船舶はまだムルマンスク港で差し押さえられており、返還の目処は立っていない)。

 また、プーチン政権は政治や環境の分野で活動する非政府組織(NGO)が西側の政治目的を達成するための先兵であると見なし、ロシア国内で活動する政治NGOが外国からの資金援助を受けている場合には自団体を「外国のエージェント(ロシア語では「アゲント」で、「スパイ」というニュアンスが強い)」と公表するほか、ロシア当局の監督を受け入れなければならないという法律を最近になって施行している。

 このような動きを進めつつ、裏では環境団体を支援していたとすれば、ロシアの秘密工作のしたたかさを改めて裏付ける事例と言えよう。

 もちろん、グリーンピース側もロシア側もこの情報を認めていない。

 ロシア国営通信社RIAノーヴォスチの取材を受けたグリーンピースのロシア事務所代表は「大変驚いた。NATO本部で何か薬でもキメてんじゃないのか」と非常に強い言葉で不快感をあらわにしている。

 また、ロシアのドンスコイNATO大使も、ラスムセン事務総長の発言は「根拠のないお笑いぐさ」であり、もし広告代理店か何かを雇ってこういうことをやっているのであれば「次は専門家に笑われないようなやり方にすることをお勧めします」と皮肉交じりに応酬した。

 いずれにしても、今回の件はウクライナ危機によって持ち上がった欧州のエネルギー不安が背景にあることはたしかで、今後のウクライナ情勢如何によっては大きな政治的問題に発展する可能性を秘めていると言えよう。