ウクライナ国家親衛隊の設立と「ロシア軍のウクライナ侵入」? 住民投票前に入り乱れる思惑

クリミア半島をロシア軍が占拠してからすでに2週間以上が経過している。

日本時間の今日昼にはクリミアのロシア編入を問う住民投票が行われるとあって緊張はさらに高まっており、ロシアやNATOは軍事行動を活発化させている。

これに対してウクライナ側は極右勢力の取り込みによって防衛体制の強化を図っているほか、故意に自国の基地を襲撃させるという陰謀論めいた話まで浮上してきた。

ウクライナ軍の実力

ウクライナが独力でロシアに対抗することは難しい。

クリミア半島に駐留していたウクライナ軍は、すでにウクライナ海軍総司令官を初めとして多くがロシア側に投降するか寝返るかしており、ごく少数が武装籠城している状態に過ぎない。

また、セヴァストーポリにほど近いベルベク飛行場にはMiG-29戦闘機を装備する部隊が駐留していたが、これもロシア軍が包囲した上、ウクライナ将兵を閉め出してしまったため、クリミアのウクライナ軍はほぼ無力化されたと見てよいだろう。

ウクライナ軍全体に視野を広げても、兵力、装備の質、訓練などのあらゆる面でウクライナ軍はロシア軍に劣勢である。

暫定政権のテニューフ国防相によれば、陸軍の兵力は定数4万1000人ということになっているが、実際に戦闘に投入可能なのは6000人程度であり、戦闘車両の操縦手のうち戦闘が遂行可能な水準にあるのは全体の20%程度、628機の航空機・ヘリコプターのうち飛行可能なものは15%・・・など、かなり悲惨な数字を並べている。

「国家親衛隊」の設立

暫定政府がこのような状況下で軍の弱体さを認めたのは、それをヤヌコヴィチ政権の失策として非難すると共に、NATOの軍事的庇護の必要性を強調する意図があるのだろう。

同時に、暫定政権は「軍事力強化のため」として極右勢力を国家体制の中に取り込む動きを拡大させている。

暫定政権のヤツェニューク首相が、極右政党「右派セクター」の武装行動隊を国軍の一部とすることを決定し、国防省トップが反発して解任されたといわれる件についてはすでに前回の小欄でご紹介したが、結果的には軍ではなく内務省の一部とすることが決まったようだ。

内務省の指揮下にある国内軍にキエフのマイデン広場で戦った自警団や右派セクターの武装行動隊を編入して2万人規模に拡大するという。

名称は「国家親衛隊」で、12日に正式に設立された。

だが、旧国内軍系と「右派セクター」系とが同じ組織でうまく折り合っていけるのかどうかについては、甚だ疑問が残る。

なにしろ「右派セクター」はキエフでの反政府デモを過激化させた張本人であり、国内軍はそれを鎮圧していた内務省側である。先月まで敵と味方であったもの同士がそう簡単に協力できるようには思われない。

さらに極右的な傾向を持つ政党の行動隊を正式に国家機構に組み入れて権限や武器を与えるというのは、かつてのナチス・ドイツにおける突撃隊や親衛隊を思わせ、どうにも不気味な事態に思えてならない。

メリトーポリからヘルソンへ?

ロシアの『ヴズグリャート』紙(3月12日付け)は、「アノニマス・ウクライナ」と称するハッカー集団が、ウクライナ軍参謀総長と在キエフ米国武官補とのメールのやりとりを傍受することに成功したと報じた。

これによると、イーゴリ・プロツィク参謀総長とジェイソン・グレシュ米武官補は、「右派セクター」を使ってクリミアに程近いメリトーポリのウクライナ空軍基地を襲撃させ、それをロシア軍の仕業として非難する計画を立てていたという。

もっとも、手紙の中では「15日までに(つまり住民投票の前に)急いで」決行する必要があると述べられているものの、本稿を書いている時点ではそのような情報は伝わってこない。

事前に情報が漏れたために中止されたのか、そもそもガセネタであったのかを含めて真偽は不明である。

一方、その15日には、メリトーポリの西側にあるヘルソンにヘリの大編隊が出現し、一時的にガス・パイプライン施設を占拠したという話が出回った。

その際の映像と称するものもYouTubeで閲覧することが出来る。

その後、ヘリの編隊は立ち去ったというが、本当にロシア軍の仕業であったのか、それとも前述したウクライナ側の工作活動の対象がメリトーポリからヘルソンに変わったのかは定かではない。

もっとも、何者かが相当に大がかりなヘリの大編隊(しかもMi-24武装強襲ヘリを含んでおり、明らかに国家の力が無ければ不可能である)を展開させたことはたしかであり、クリミアを巡って謀略まがいの事態が起きていることはたしかなようだ。