箸にも棒にもひっかからなかった負の遺産が 大人気商品「高品質お掃除グッズ“ほこりんぼう!”」に!

●「ほこりんぼう!」

いま東急ハンズをはじめ有名百貨店で売れに売れているお掃除グッズがある。狭いすきまの綿ぼこりが驚くほどとれる、その名も「ほこりんぼう!」だ。

2本入り1080円(税込)と、掃除用品としてはけっして手に取りやすい価格とは言えないこの「ほこりんぼう!」。いったいなぜこんなに人気を集めているのか?

これが「ほこりんぼう!」だ
これが「ほこりんぼう!」だ

その答えは、やはりなんといっても圧倒的な品質の良さにある。というのも、もともと「ほこりんぼう!」は紡績工場向けの綿ぼこりを除去するために開発され使用されていた製品だからだ。つまり、品質管理に厳しい紡績工場で使われていた折り紙つきの代物というわけだ。

しかし、これだけレベルの高い技術と製品を抱えていたにもかかわらず、当の販売元はまったくこの素晴らしさに気付いていなかったのである。

当の販売者とは、静岡県中部の島田市にある中小企業「株式会社イトー※以下イトー」の専務である伊藤正一さんだ。

彼とお会いしたのは2年前の春のことだった。「下請けから脱却し、独自性ある商品開発を行ないたいのだが、どうしたらよいのか?」と、伊藤さんが私どものエフビズに相談に来られたのだ。

1974年に設立された株式会社イトーは、91年から紡績工場向けに綿ぼこり除去製品を作り始めたのだが、相次ぐ紡績工場の海外移転のあおりをうけ、売り上げが20年前より75%も減ったという。そこで起死回生となるアイデアを求めてやって来たというわけだ。

●強みを発見

伊藤さんのお話をひととおり聞いた後、彼にある宿題を出すことにした。それは「箇条書きでいいので自社の強みを書いてきてください」というものだった。

そして私は、翌月彼が持ってきたメモを見て仰天することになる。

イトーが製造していたほこり除去製品は、ローラーのような部分に直立した無数の短い繊維を植え込んだもので、一度キャッチした綿ほこりを逃さないつくりになっていた。しかも、この製品を製造しているのは今ではイトーのみだという。

つまり、他社にはないオンリーワンの技術だったのだ!ただし、このままでは単なる負の遺産になってしまう代物でもあった。

このとき、「綿ぼこり」というキーワードから、私はあるニュースを思い出した。家具の裏側など目立たない場所にあるコンセントに綿ぼこりがたまり火災になったという事件だ。

そこで提案したのが、「品質管理の厳しい紡績工場で実績あるこの綿ほこり除去製品を活かしたら、一般家庭用として需要があるのではないか?」ということだった。

たしかにほこりキャッチをうたう商品は数多く出回っているが、そうした既存品では対応が難しい極めて狭いところ専用の綿ぼこり除去スティックとして、一般消費者向けに商品化できるのではないかと考えたのだ。

家庭向けの商品を作った経験のない伊藤さん、とまどいながらも試作品を完成させた。しかしそれは、ひのきの棒に白い繊維を植毛しただけのものだった。このままでは既存のほこり取りグッズにはかなわない、まさに箸にも棒にもひっかからないような棒で終わってしまう。品質の次元が違うだけにじつに口惜しかった。

富士市産業支援センターf-Bizで伊藤さんたちと戦略会議
富士市産業支援センターf-Bizで伊藤さんたちと戦略会議

●ターゲットの絞り込み

ターゲットをもっと意識する必要があるのだ。そこで私達は、ホームセンターやスーパーに並ぶ「掃除用品」ではなく東急ハンズやロフトなどで扱われる、「掃除にもこだわりを持つ層が買う“お掃除グッズ”」のレベルに合わせたネーミングやパッケージ等も提案した。

その後、伊藤さんの会社では約2年にもわたる研究開発を続けることになる。

女性に買ってもらえるよう、開発には伊藤さんの奥様の意見も取り入れた。その結果、植毛部分はピンク・黄・茶にカラーリング。また、バッグにも入る45センチというサイズにもこだわった。

出来上がった試作品を友人知人に試用してもらったところ、「子供達が率先してお掃除を手伝ってくれる」ということが新たにわかった。そこで、子供にも分かるよう、パッケージの台紙に使い方を説明するマンガをのせた。じつは、このパッケージだけでも約10回も作り直している。

こうしてついに誕生した「ほこりんぼう!」。昨年12月に東急ハンズ新宿店で実演販売すると飛ぶように売れていった。すぐに全国各店での取り扱いが決定。各店でものきなみヒット商品となり、その後、松坂屋での販売も実現した。また、大手通販会社からの引き合いや、紡績工場以外の綿ぼこりに悩まされている企業からの要望もある。

株式会社イトーによれば2月からこれまで計3千セットが売れたという。

イトーに限らず、せっかく強みだとわかっていながらその活かし方がわからない、それならまだしも、あまり大したことではないと見過ごしてしまっている残念なケースが少なくない。

しかし、既存の概念にとらわれずにながめてみると、こんなふうに意外なところで活路が拓けることが多いのである。

●情報

「ほこりんぼう!」の詳細は、伊藤正一さんが室長を務めるイトーお掃除革命室のページへ。