選択すべきは、再稼働より廃炉

アメリカの電力会社「南カリフォルニア・エジソン社(以下、エジソン社)」は、6月7日、停止中のサンオノフレ原発2,3号基の廃炉を発表しました。

経営上の理由から再稼働より廃炉を選択したのです。

サンオノフレ原発は、ロスアンジェルスの南100km、サンディエゴの北70kmの海岸に立地し、南カリフォルニアの140万戸に電力を供給していました。言い換えると、この地域の全電力需要の20%分を担っていました。

1号基は1968年に運転開始、ウエスチィングハウス社製造のPWR(加圧水型炉、関電と同じタイプ)で出力は43万kWでしたが、建設から25年目の1992年にすでに廃炉になり、現在は1.8m厚のコンクリートで覆われた使用ずみ燃料4000トンの貯蔵庫になっています。

今回廃炉になることが決まった2,3号基の運転開始は1983年と1984年、製造はコンバッション・エンジニアリング社で、やはりPWR,出力はそれぞれ107万kW,108万kWでした。

2022年まで約40年間は運転するはずでしたが、ほぼ9年早く廃炉にすることになりました。

サンオノフレ原発は風光明媚という四字熟語がぴったりの海岸に建設されています。

日本と違って海外では、多くの原発は内陸に建設されています。そこでいちばん目立つのは巨大な冷却塔ですが、サンオノフレ原発にはありません。日本と同じように海水を冷却に使用しているからです。

カリフィルニアは地震の多発地帯ですから耐震設計が大切です。そこでサンオノフレ原発の設計で想定したのはマグニチュード7の直下型地震、また沖合8kmからの津波を警戒して高さ9m弱の防潮堤を備えています。

アメリカの規制委員会(NRC)は災害の確率はあまり高くはないとしているものの、フクシマ以後、反原発の市民は地震津波に対する対策に強い不安を訴えてきました。

国土の広いアメリカとはいえ、16km圏内に10万人、80km圏内には900万人が住み、急激な人口上昇が続いているところだけに、事故が起きればフクシマ同様の災害になる可能性が心配だからです。

エジソン社が2,3号基の廃炉を決定した最大の理由は、2,3号機が経済的に引き合わないことからです。

2012年1月、2号基は点検中で停止していました。そこに3号基が、蒸気発生器の配管からの漏水により、停止しました。

厳しい使用条件の下で発生する蒸気発生器の細管摩耗は珍しいことではありません。PWRの場合、蒸気発生器の細管はいちばんの「弱点」となっています。

検査の結果、細管の異常個所は2,3号基合わせて1万5000か所に達し、NRC(原子力規制委員会)は運転を禁止しました。

蒸気発生器は2010年と11年に交換したばかりでした。その製造を担当したのは日本の三菱重工業です。NRCは、「不十分なコンピューター解析が設計ミスのもと」としています。エジソン社は三菱に賠償を求めるといいますが、両社ともに問題を把握しながら安全対策を引き延ばしてきたとの指摘もあるようで、成り行きは不透明です。

昨年、出力を70%にして運転継続する計画がエジソン社から出されましたが、許可の見通しがはっきりしません。ずるずると再稼働できないままが続きそうな気配となり、エジソン社は経営上の決断をしました。

再稼働を放棄して、サンオノフレ原発はすべて廃炉にすることしたのです。

今後、サンオノフレ原発は、発電をしない「原発」として存続します。廃炉の作業と並んで、使用ずみ燃料と放射性廃棄物の管理という永い時間を要する課題との取り組みが始まることになります。

廃炉でまず直面するのは、1100人以上の高賃金雇用の喪失という地域経済への打撃です。

電力供給の信頼性を損なうとの批判があります。

天然ガスで代替しているので燃料費アップになるという指摘もありますが、こちらの方はオイルシェールからの安価な天然ガスがあるので問題にはならないでしょう。

太陽光の普及になるように電力会社が積極的に電力購入をする経営方針を打ち出すべきという助言もあります。そうすれば新分野の産業を育成することになり、地域の雇用は確保されるというわけです。

フクシマ災害の後始末が終わらず、エネルギー計画も不明確、しかし一方では原発輸出に首相セールスマンが途上国を歴訪、フランス大統領とは原発推進で合意したと発表するなど、私たちの国の政権は「思想なき前のめり経済」に向けてまっしぐらのようです。

その先に描かれる未来のイメージは定かではありません。

1%の利益のために99%に奉仕を強い、世界の尊敬よりはマネーの獲得、選挙のためにはなるべく改憲には触れないなど市民を愚弄するとしか思えない政策を進めています。

運転見通しのない敦賀原発をはじめ常識的には廃炉しかない原発を維持し続け、さらに見通しのない高速増殖炉「もんじゅ」の断念も明言しないなど、まともな経済・経営の判断を越えた行きがかりに固執する傾向はますます強まっています。

最終的に生じるマイナスは、みな国民が負担することになります。これは、もう生命に関わる日本型の慢性疾患という他はありません。

再稼働の基準を7月に規制委員会が明らかにする予定ですが、電力会社は最稼働の基準による検討結果だけではなく、停止中の原発の廃炉検討の結果も合わせて情報公開するべきです。