2013科学ジャーナリスト賞

14日の夜、科学ジャーナリスト賞の授賞式が東京の日比谷にあるプレスセンターで行われました。

私も会員である日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)が主宰する賞で今回が8回目になります。

科学技術に関するテーマで科学技術を社会に広めたという点で前年度に際立った活動を行ったジャーナリスト、コミュニケーター、研究者、PR担当者などを表彰するというものです。

念のため書き添えると、JASTJは会員の会費だけで運営しているため予算に乏しく、記念のオーナメントを贈呈するほか、副賞は賛助会員提供の品物(ちなみに今年はボールペン、ワインなどでした)といった具合です。

しかし、賞の選考に参加していただいている外部選考委員は、科学技術振興機構顧問の相澤益男さん、東大名誉教授で学術振興会理事の津島誠さん、筑波大学名誉教授でノーベル化学賞受賞者の白川英樹さん、東洋英和女学院学長の村上陽一郎さん、慶応大学名誉教授で元日本物理学会会長の米沢富美子さんという豪華メンバーです。

もう意気に感じて選考委員をしていただいているという他ありません。

JASTJ側の委員も5人、私もその一人になっています。

受賞候補者の推薦総数は70人余り。新聞、テレビ、書籍での業績が目立った人、WEBや、今年はありませんでしたが博物館展示なども「業績」の中に入っているので2月から3月にかけてはテレビ番組を見、本を読み、記事を読み・・・と、かなりハードな選考期間が続きました。

一次、二次の選考を経て最終的に今年度の科学ジャーナリスト賞に選ばれた4人(グループを含む)は、かなりハイレベルの的確な授賞だったと思います。

科学ジャーナリスト賞を受賞したのは3人。

NHKスペシャルの「世界初撮影!深海の巨大イカ(13年1月13日放送)」の制作者を代表してNHKエンタープライズのエグゼクティーブ・プロデューサー岩崎弘倫さん。

10年の歳月を重ねた国内外の科学者との共同作業で深海に潜む巨大なダイオウイカを捉えた迫真の映像はテレビならではのものでした。

毎日新聞の「韓国人に未検証の幹細胞治療」の記事から始まる再生医療検証報道に対して、取材班代表の八田浩輔さん。規制のない日本の「再生医療」を受けるために韓国から来日する人々がいることをスクープ(12年12月)しました。

再生医療の法改正にも大きな影響を与えました。新聞の生命はやはりスクープです。

NNNドキュメント‘13で放送した「活断層と原発、そして廃炉~アメリカ、ドイツ、日本の選択~(13.1.27放送)」に対して、制作者代表の日本テレビ放送網チーフディレクターの加藤就一さん。

タイトル通りの内容を丹念に追いました。民放の場合、制作条件はかなり厳しいものがあると想像されますが、頑張ったことへのエールという意味もあります。

授賞式に合わせるように、原子力規制委員会が敦賀原発2号機直下に活断層があることを明言、廃炉が不可避になりました。高速増殖炉「もんじゅ」も同様な運命を迎えました。

福島事故を教訓にしない政治的な巻き返しがこれからますます強くなるでしょうが、どこの国でもダメなものはダメなのです。

今年度の科学ジャーナリスト賞大賞を受賞したのは、朝日新聞の「原発とメディア(2011年10月から306回の連載)」。取材班を代表して上丸洋一さん、隈元真一さんが受賞しました。

私は「原子力のペンタゴン」と称していますが、いわゆる原子力ムラには、メディアも深く関わって来ました。原子力「平和利用」のそもそもからメディアのビヘイビアを検証した記事は、報道におけるメディアの在り方を示すこころざしがありました。

朝日新聞(だけではないけれど)が、この姿勢を忘れることなく教訓とすることを期待したいと思います。

ところで、授賞式は、第1回の時からカジュアルな雰囲気で進めることを恒例にしてきました。なかでも外部選考委員の先生方の講評、受賞者の言葉は、形式的ではなく内容があって、いつも聞きごたえがあります。授賞式の売り物といってよいくらいです。

そのためにたっぷり時間をとっていますが、いつも時間が足りなくて司会者ははらはらさせられます。

最初の頃の何回か、私が司会を担当したのでその思い出は強烈です。会場の終了時間が決まっていて、係りが「そろそろ時間ですよぉ」と迫ってくるからです。話が盛り上がって、なかなか散会できないこともありました。

今回に限って言うと、私はやむを得ない所用があって先生方の講評後に中座してしまったので、受賞者の話が聞けずに残念でした。

一つ忘れていました。選考委員会で決定した受賞者がもう一人いました。

ある書籍を書いた方ですが、「賞を贈呈したい」と連絡したところ「私は賞というものを受けない主義」ということで固辞されてしまいました。

96の背番号を付けて画面に登場する政治色濃厚な国民栄誉賞とは違いますからぜひ受けて欲しかったのですが、ちょっと残念でした。