国際社会の経済制裁と新型コロナウイルス対策の国境封鎖(貿易停止)などで、経済難が深まる一方の北朝鮮。国内では、生き延びる道を求めて、犯罪に走る人が増えているとされる。

 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、平安南道(ピョンアンナムド)の徳川(トクチョン)で最近、ある猟奇事件が現地の人々に衝撃を与えた。

 現地住民はRFAの取材に対し、「7月末、地元に住む30代の男性が山中にある墓をこっそり掘り返して遺体の脳髄を取り出し、『精神病の治療薬だ』として販売したのが露呈して、安全部(警察)に捕まる事件があった。地元住民は一様に驚愕し、恐怖に震えている」と語った。

 この住民によれば、「男性が安全部に捕まるきっかけになったのは、薪集めをしようと明け方に山に入った住民の通報だった。住民は山のふもとで、泥だらけの姿で山から降りてくる男性と遭遇し、不審に思った。山の中に入ってみると、新しい墓が掘り返されており、安全部に通報した」という。

 住民はまた、「安全部の調べに対し男性は、今年の春から複数回、山の中の墓に埋葬されたばかりの遺体の脳髄を取り出し、振り払っていたと自白した」と付け加えている。

 医療体制がぜい弱なために、北朝鮮には科学的な根拠の怪しい民間療法に頼る人が少なくない。また、まともな医薬品の入手が困難であることから、体調を崩した際に、麻薬や覚せい剤に手を出す人すらいると言われる。

 この事件もまた、そうした社会情勢を背景に起きたものと言えるだろう。

 前出の住民は、この男性がどのような刑罰を受けるか見当がつかないと話しているようだが、北朝鮮当局が、このような猟奇事件を大目に見る可能性は少ないと思われる。

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 北朝鮮当局は、その罪状がどうであったかということよりも、民心に与える影響の大きさを重視する傾向が見られる。現在のように、国民の生活難が深まっているときには特にそうだ。

 徳川は「陸の孤島」のような僻地だが、事件の情報がすでに海外にまで伝わっているところを見ると、国内では相当数の人々が噂を耳にしているだろう。

 そうなると、北朝鮮当局は噂の根源を断つためにも、男性を死刑にする可能性が高いと思われる。