先月23日から今月2日にかけて、梅雨前線が朝鮮半島の中南部に停滞。それに伴い、北朝鮮でも大雨が降り続いた。

 国営の朝鮮中央通信は、先月30日から今月2日までの間に、西海岸、慈江道(チャガンド)、咸鏡南道(ハムギョンナムド)、江原道(カンウォンド)で100ミリから150ミリ、黄海北道(ファンヘブクト)黄海南道(ファンヘナムド)南部、江原道内陸、開城(ケソン)市で200ミリから300ミリの雨が降るとの気象水文局(気象庁)の予報を伝えている。また、大雨に農地に被害が出ないよう、あらかじめ対策を取ることを訴えた。

 しかし、防災インフラの脆弱な北朝鮮だけあって、各地で被害が続出していると、デイリーNKの内部情報筋が伝えている。

 黄海北道の谷山(コクサン)郡では、大雨で家の壁が崩壊し、突風で屋根が飛ぶ被害が出ている。中でも、土壁の家で被害が大きく、情報筋が伝えただけでも4棟が崩壊、5人が重傷、3人が軽傷を負う被害が出ている。不幸中の幸いで死者は発生していないものの、家を失った人々は、学校などに避難して生活することを余儀なくされている。

 これらの家はいずれも古く、政府の指示で堤防工事など、水害を未然に防ぐ対策を取ったものの、しっかりした工事が行われなかったようで、被害へとつながった。

 なお、谷山を含めた黄海北道の山間部は、インフラ全般が著しく立ち遅れた地域として知られている。

 一方、同じ黄海北道でも、道庁所在地の沙里院(サリウォン)市に隣接する銀波(ウンパ)郡は、平地の穀倉地帯にあり、上述の谷山よりは環境が整っていると思われるが、こちらでも大雨による被害が続出している。

 真夜中に川が氾濫し、数十世帯が浸水し、住民が慌てて避難する事態が発生した。

 この地域だが、2020年8月にも台風による大雨で大規模な浸水被害が発生、その復旧現場を金正恩総書記が視察し、支援物資を送っている(上の写真)。

 しかし、その実情はお粗末そのものだった。災害復旧のため、金正恩氏が平壌から派遣した朝鮮労働党の首都党員師団1万2000人の一部は、資材を売り払って酒を買い込み、仕事そっちのけで酒盛りに興じたり、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の建設部隊の兵士が、盗みを働くなどした。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

 また、北朝鮮版やっつけ仕事の「速度戦」で復旧工事が行われたため、住むに適さないような復興住宅が量産された。

 この地域は、まともな堤防のない川が多いだけあり、いつまた被害に遭ってもおかしくないだろう。