北朝鮮が、新型コロナウイルスの感染者発生を公式に認めた先月12日以降、全国には厳しいロックダウンが敷かれた。

 おりからの経済難、食糧難の中で、巣ごもり用の食べ物を確保できず、餓死する人が相次いでいる。一部地域では、あまりの状況の酷さに、ロックダウンを早期に緩和する措置が取られた。

 首都・平壌郊外の物流の中心地、平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)もそのひとつだ。ようやく外出することを許された人々は、生きるため街角に立ちようになったが、当局はそんな生きるための動きを押さえつけようとしている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

 平城市の安全部(警察署)は、「イナゴ商人」に対する取り締まりを始めた。これは、ショバ代を払って公式の市場で商売せず、市場周辺の路上や、住宅街の路地裏で商売する露天商のことを指す。

 ロックダウンの緩和に伴い、イナゴ商人が急増したことから、安全部は取り締まりに熱を上げている。今月初めには、路上で野菜を売っていたイナゴ商人7人が摘発され、農場に連行されて、5日間草取りをさせられる処分を受けたとのことだ。もちろん、販売していた品物はすべて没収され、草取りの手間賃などもらえるわけもない。

 その中には、3歳の子どもを抱えた30代女性もいて、「子どもが栄養失調にかかって起き上がれない。子どもに粥でも食べさせるために、一度だけ大目に見てほしい」と安全員にすがりついたが、安全員は聞く耳を持たず、有無を言わさず農場送りにしてしまった。結局、彼女は農作業中に倒れてしまい、病院に担ぎ込まれたとのことだ。

(参考記事:激しい拷問に耐え続けた北朝鮮「レザーの女王」の壮絶な姿

 北朝鮮では、国営企業や国の機関に所属して行う仕事以外は、職業として認められない。市場内外での商売は、無職の扱いになる。全国で田植え戦闘が行われる中で、路上で「遊んでいる」のは許されないという理屈なのだろう。また、非公式に商売を行うことは非社会主義現象、つまり当局が考えるところの社会主義にそぐわない行為で、取り締まりの対象だ。

 しかし、生きていくために現金収入を得るには、何らかの形で商売をしなければならない。企業や機関から支給される月給では、コメ1キロも買えず、かつてあった食糧配給も行われないからだ。

 ちなみに、デイリーNKの物価調査によると、今月12日の時点での平壌の市場でのコメ価格は5300北朝鮮ウォン、トウモロコシは2800北朝鮮ウォンで、いずれも上昇傾向にある(いずれも1キロの価格、1000北朝鮮ウォンは約20円)。一方で、北朝鮮労働者の一般的な月給は3000北朝鮮ウォンに過ぎない。

 今回摘発された7人を含め、イナゴ商人はいずれもその日暮らしをしている最貧困層だ。農業と人民経済(民生経済)を重要視し、人民を大切にすると繰り返している金正恩総書記だが、一般人民は、最低限の生きる術さえ奪われ、餓死の危機に直面しているのだ。