今月16日、北朝鮮と中国を結ぶ貨物列車の運行が2年ぶりに再開された。昨年1月のコロナ鎖国以降、首都・平壌近郊の南浦(ナムポ)港を通じた貿易が細々と行われてきただけで、北朝鮮国内では深刻な物資不足が続いてきた。今回の運行再開で、その状況にいくらかの変化が出ることが予想されている。

 ところが、このニュースを耳にした北朝鮮国民の反応は歓迎一辺倒というわけではないという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

 平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の情報筋は、「貨物列車が運行を再開し、無蓋車と有蓋車に食料品、建築資材、営農資材、医薬品などが積まれているとのニュースが新義州を通じて全国に広がっている」と述べた。

 情報筋によると、この件は子どもも知っていて、皆一様に喜んでいるという。「新義州に出張に来た他地域の幹部も、話を聞いて喜んでいた」とし、「やはりわが国(北朝鮮)は中国なしではダメだ」と率直に語っているとのことだ。

「言葉では自力更生しようと言っているが、何をもって自力更生をするのか。幹部も一般住民も、中国なしでは生きていけないことを皆知っている」(情報筋)

(参考記事:「金正恩の犬野郎のせいで人民が餓死」批判の落書きに平壌が騒然

 一方で、心配の声を上げる人もいるという。今回の運行再開は、来月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)80周年を祝うために、コロナにもかかわらず物資を取り寄せたに過ぎないと考えているというのだ。つまり、運行再開は一時的な措置で、光明星節、または4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)が過ぎると、運行がまた止まってしまうのではないか懸念している、ということだろう。

 新義州に住む親戚を通じて、運行再開の話を聞いたと話した平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋も、光明星節を祝って配られる贈り物の原材料や軍事パレードに必要な食料品を取り寄せていると聞いたと述べた。

「(贈り物のことを)大きく宣伝したとしても特に望んではいない。中国との交易が再開して、貝と(中国製品をバーターで)交換するということになれば感動するだろうが、そうなったとしても雀の涙。どうせ皆の手に届くものは少ないだろうから」(情報筋)

 食料品が輸入されたとしても、特別扱いされている平壌市民への配給に回され、地方の住民は何ももらえないだろうし、そもそも期待すらしていないというのが、この情報筋の話だ。

「毎年そんなことをやってきたから、人々は期待すらしない。実際に配られてようやく、『今回はくれるみたい』だ、と思う。やると言って、くれなかったことがあまりにも多いから信じない。住民は現実になるまでは信じようとしない」(情報筋)

 北朝鮮の貿易は、国の承認と通関検査を受けた公式貿易、国の承認は得たものの通関を経ずに持ち込まれる非公式貿易、国の承認も通関も受けていない密輸の3重構造からなっていた。具体的な割合は不明だが、一般庶民の生活必需品や食料品の多くは、密輸で持ち込まれていたと考えられている。

 国が国境の警備を強化し、密輸をほぼ完全にブロックしている今では、コロナ前のように潤沢に物資が供給されることはないのだ。そして、公式貿易で持ち込まれたものは、自分たちのところに届かないことも、北朝鮮国民はよく知っている。公式貿易、非公式貿易が正常化されたところで、自分たちには関係ないということだ。