極超音速ミサイルの試射を連続して行うなど、新年早々、軍事力の誇示を派手に行っている金正恩総書記。その一方で、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の内部では深刻な腐敗が進行している。

 平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、最近全容があきらかになった「燃料大量横領事件」について詳しく伝えている。

 国家財産の横領、窃盗、横流しの類は、かつて旧共産圏諸国では頻繁に行われ、北朝鮮では1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから深刻化した。当時、最高指導者だった金正日総書記は、見せしめの公開処刑を乱発して抑え込もうとした。

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 しかしその後も、軍内での横領や横流しは続いており、それに極刑をもって臨む姿勢は、金正恩政権も変わっていない。いったいなぜ、横領が止まらないのか。その背景には、そうでもしなければ生きていないほどの薄給しか、軍人に支給されていない実態がある。

 また、除隊後に生きていくためには、年金だけでは到底足りず、在籍中からせっせと横流しをして蓄財する必要もあるのだ。さもなくば、待っているのは餓え死にだ。

 しかし、大量の燃料が横領により失われている現実は、北朝鮮軍の弱体化に拍車をかける重大な問題だ。金正恩総書記がいくら兵器の近代化に取り組もうと、底の抜けた容器のように、軍の疲弊は進んでいく。

 今回の事件の主人公は、軍の総参謀部に勤務するチェ上佐(大佐と中佐の間の階級)だ。

 当然のことながら、燃料がなければ軍は戦車1台すら動かせず、まともに戦争すらできない。戦車、装甲車を扱う機械化部隊には、20トンのタンクローリー3台を使って燃料が供給され、上佐級以上の軍官(将校)が管理責任を負っている。

 チェ上佐は燃料供給を担当しつつ、数年間に渡って少しずつ燃料を横領した。その合計は200トン近くに達する。燃料は市場で販売した。ガソリン1キロ(約1.34リットル)は10元(約180円)、ディーゼル1キロ(約1.25リットル)は7元(約127円)というのが相場だが、半額ほどで販売していた。元手は一切かかっていないから、いくらで売っても儲けが出るため、売値を安くして早急に売りさばく手法だ。

 どこから足がついたのかは不明だが、総参謀部所属のタンクローリーがやってくるたびに、部隊近隣の定州(チョンジュ)、宣川(ソンチョン)一帯の商人が押し寄せてくることから、このようなネコババは常態化していたのだろう。

 チェ上佐に対しては重い処罰が予想されているが、軍官が軍の高位幹部とグルになってやっていることだけあり、摘発は難しく、今後も今までのように、このような行為が多発するだろう。