独裁10年の「罪と罰」(2)

 北朝鮮の金正恩総書記は10日、朝鮮労働党の創建76周年を迎えて行った記念演説で、過去10年間の執権期間を振り返りつつ、今後5年で国民の衣食住の問題を解決すると表明した。

 しかし、貿易停止などの行き過ぎた新型コロナウイルス対策と自然災害で、北朝鮮国民の生活の苦しさは加重されているのが現実だ。

 金正恩政権は幕開けと同時に、悲惨な大量餓死を引き起こした。

 韓国に程近い北朝鮮の黄海南道(ファンヘナムド)。平野が広がり、気候も穏やかなため、昔からコメが多く取れる穀倉地帯として有名だ。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」でも、相対的に餓死者が少なかったと伝えられている。

 ところが2012年の春、この地域で大量の餓死者が発生した。正確な死者数は今に至るも明らかになっていないが、北朝鮮ウォッチャーの間では1万人以上であったと推測されている。

 これは、明らかな「人災」だった。前年末の金正恩政権の発足を祝う“どんちゃん騒ぎ”を数カ月にわたり続けるため、黄海南道の食糧を、当局が根こそぎ徴発してしまったのだ。黄海南道の村々からは瞬間的に食べ物が消滅してしまったので、人々には飢えに備える猶予さえ与えられなかった。

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 後に報じられたところでは、朝鮮労働党指導部は密かに、この飢餓が「人災」であると認める内部文書を作っていたという。大規模な飢餓の発生は、体制の安定にダメージになる。そんな危機感から、権力内部で総括が行われたのだろう。

 では、そのような総括を経て、金正恩政権は変わったのか。とうていそのようには見えない。

 北朝鮮の食糧事情は「苦難の行軍」以降、大幅に改善されている。貧しくて食べ物を十分に買えない人々は数多くいるが、国内に「食糧がない」という状況は基本的になかった。餓死が発生するのは、得てして当局の失政が原因なのだ。

 最近でも、当局がコロナ感染の疑われる人々をろくな支援もないまま家屋に長期間にわたって閉じ込めたり、庶民に食糧を準備する暇も与えないままロックダウンを発動したりしたせいで、少なくない餓死者が発生したと見られている。

 金正恩氏にとっては独裁体制の維持こそ最優先であり、国民の生命は二の次なのだ。そのことは、執権から10年が過ぎようとしている今も変わっていない。