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若者たちが大量に…「死の夜会」と化した北朝鮮の熱狂集会

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
軍事パレードに動員された北朝鮮の青年ら(朝鮮中央通信)

 故金日成主席が1927年に朝鮮共産主義青年同盟を結成したことを祝って制定された8月28日の青年節。様々な祝賀行事が開かれるが、平壌の金日成広場では、多くの若者が一堂に会して、夜会と称する大々的なダンスパーティが開かれた。

 平壌のみならず、全国各地で同様のイベントが開かれる。8月初めに大雨の被害を受け、現在復旧作業が行われている咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)でも同じだ。ところが、その準備過程で騒動が起きてしまった。

公開処刑も

 端川市の端川邑(市の中心部)の糧政事務所に勤める若者たちは、被害復旧の作業を終えた後、うち一人の自宅に集まって、青年節のイベントの練習と準備作業をしていた。最初は、青年同盟が決めた歌の練習をしていたのだが、そのうちに一人、また一人と禁制の韓国のK-POPを歌い始め、最後は皆でダンスに興じ、大騒ぎしてしまった。

「年配の人たちは知らないが、若者たちは南朝鮮(韓国)の歌と踊りを皆が皆知っていて、(踊ったり歌ったりすることを)恐れていなかった」(情報筋)

 近隣の住民は、復旧作業でクタクタになった若者を気の毒に思い、歌って踊って楽しんでいるのを見守っていたが、おりしも当局が韓流に対する取り締まりを強化し、住民に密告を奨励している真っ最中。何か様子が変だと感じ取ったようで、保衛部(秘密警察)に通報してしまった。

 出動した保衛部が家に踏み込んだところ、大音量でK-POPが流されているのを発見し、全員を逮捕したという。

 住民の間では「処罰は軽いもので済まされないだろう」という保衛部の話が噂になっているという。少なくとも労働鍛錬隊、教化所(刑務所)行きになることは間違いなく、公開処刑や管理所(政治犯収容所)行きもあり得るということだろう。

(参考記事:金正恩「女子大生クラブ」主要メンバー6人を公開処刑

 ちなみに青年節のダンスパーティを巡っては昨年、参加者の間で発熱症状を見せる参加者が続出し、160人が隔離されるという事件が起きている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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