北朝鮮では近年、金正恩総書記の号令の下、「非社会主義・反社会主義現象」の一掃と称して風紀取り締まりキャンペーンが行われてきた。そこには密輸、麻薬の取り引き、占いなど様々な行為が含まれるが、その一つが「不倫」だ。

幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)の間では不倫が当たり前に行われていると言われる。外見やメンツが非常に重視される社会風潮が強いことから、カネも権力もある男性らは、若くて容姿に優れた女性との関係を誇示したがるという。つまり、愛人を囲うことがある種のステイタスというわけだ。そんな幹部のひとりが当局に摘発されたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

平安南道(ピョンアンナムド)安州(アンジュ)市食料工場のチェ支配人(50代)はある日、酒に酔い、工場でドライバーとして働いていたキムさん(30代)の妻に性的暴行を加えるに及んだ。偶然その現場を目撃したキムさんは、怒りのあまり、支配人に暴力を振るった。それに恨みを抱いた支配人は、キムさんを食料工場の一般労働者に格下げする報復人事を行った。

それでも、キムさんは屈服せず、中央党(朝鮮労働党中央委員会)への信訴に乗り出した。信訴とは、不正行為を告発する法的手続きだ。

信訴に基づいて中央党の検閲(監査)が行われた。その結果、支配人は権力にものを言わせ、復数の20代女性と性的関係を持ってきたことが判明した。その数はなんと20人。

(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為

そればかりか、工場の予算を横領して女性に食べ物や物資を与えたり、住宅を割り当てたりしていたことまで判明した。

支配人は、安州炭鉱の一般労働者に格下げされ、革命化(下放)の処分が下された。コロナ鎖国による経済難で社会が混沌とする中、引き締めを図るために、不正行為に対しては処刑を含めた重罰が下されることが増えているが、理由は不明だが、比較的軽い処罰で済まされたようだ。

とばっちりを受けたのは、市内の別の工場や企業所の幹部たちだ。1週間に渡って思想検討を受けて、自己批判書を書かされた上に、道党(朝鮮労働党平安南道委員会)による追加検閲を受けるはめになってしまったのだ。幹部の間で不倫が蔓延していると見てのことだが、情報筋はいくら検閲を行ったところで不倫の根絶は難しいと見ている。

「わが国(北朝鮮)で幹部の不倫は伝統的なもの。党書記、支配人、技師長など幹部は、少なくとも1〜2人の女性を囲っている」(情報筋)

特に今のような経済難の中で、金銭の問題が絡んだ不倫や、売春が幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)の間で広く行われているとのことだ。生活苦に追いやられた若い女性が、売春を行ったり、幹部と不倫したりすることが増加の一途をたどっているとのいうのが情報筋の説明だ。