国内での新型コロナウイルスの感染者発生を未だに認めていない北朝鮮だが、各地でコロナと疑わしき症状で隔離される人が後を絶たない。

中国との国境を守る咸鏡北道(ハムギョンブクト)鏡城(キョンソン)郡に駐屯する国境警備隊でも最近、発熱患者の急増に伴い、中隊まるごと隔離され、壊滅状態に陥る事態が起きた。

当局は、中国からのコロナの流入を恐れ、国境警備を今までになく強化し、国境警備隊には密輸、脱北目的の人間のみならず、国境を越えてくる野生動物も射殺するよう命令を下している。国境警備に穴が生じれば、これ幸いと、密輸、脱北に乗り出す人が増える可能性がある。

(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」北朝鮮、軍人虐殺の生々しい場面

現地のデイリーNK内部情報筋によると、鏡城郡の国境警備隊の中隊で今月5日ごろから微熱を出す隊員が現れたが、その後、高熱を出す隊員が急増した。ただならぬ状況と感じた幹部は上部に報告した。

派遣された軍医が隊員の検温を行った上で、200人ほどの中隊全体に対して隔離措置を下した。その期間は50日。中隊では、高熱を出している患者、熱が出たばかりの患者、無症状者を分けて、隔離を行っている。

また、軍官(将校)用の舎宅(兵舎)に隊員が出入りすることが感染拡大の原因と見て、行動に制限を加えつつ、隊員の家族の状況も注視している。

軍医が発熱の理由として挙げたのは、パラチフスだ。パラチフス菌と腸チフス菌に汚染された水や食べ物により感染する感染症で、衛生環境の悪い途上国で多く発生しており、北朝鮮でもしばしば流行している。

ただ、コロナと疑わしき症状が出ていたとしても、コロナであると認めることは許されず、検査体制も整っていないため、何の病気か正確に診断することは不可能だ。

国境警備隊でパラチフスが流行しているとの話は、近隣住民にも広がり、伝染病(コロナ)の問題が表れている中で、パラチフスまで広がった、気をつけようとのリアクションを示しているとのことだ。

国境警備隊の中隊がまるごと機能停止の状態に陥ったことで、近隣地域に駐屯する一個中隊が補充として投入されたが、元々の地域の警備も兼任しているため、国境警備が手薄になっている状態だと、情報筋は伝えた。

当局は密輸や脱北の増加を恐れてか、発熱していない隊員の隔離を解除し、国境警備に投入するだろうと、情報筋は見ている。

ちなみに、パラチフスにはワクチンが存在せず、抗生剤を投与するしか治療方法がない。医薬品そのものが不足している状況で、パラチフスに感染した隊員たちは、自然治癒を待つしかない。