金正恩が処刑「女子大生クラブ」の背後に芸能人育成の闇

金正恩氏と三池淵管弦楽団(朝鮮中央通信)

今年7月に北朝鮮の首都・平壌で摘発された大規模な組織売春、名付けて「女子大生クラブ」事件。同国からはこれまでに何度も組織売春摘発の情報がもたらされているが、今回の事件はとりわけ衝撃的だ。

北朝鮮では1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころ、生きていくために売春を行う女性が増えたとされる。その取り締まりのため、2004年の法改正で「売淫罪」が新設され、「売淫行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い者には5年以下の労働教化刑に処す」と定められた。だが実際には、罪状が重いとみなされたケースについては、超法規的な公開処刑が繰り返されている。

今回も平壌音楽舞踊大学、平壌演劇映画大学など芸能人の養成校の女子学生らが動員されていたことに金正恩党委員長が激怒。組織の主要メンバー6人が公開処刑された。

(参考記事:女性芸能人らを「失禁」させた金正恩の残酷ショー

それにしても、現在の北朝鮮には売春を行う女性が少なくないとはいえ、その多くは農村や都市貧困層の女性たちだと考えられていた。都市部の学生にもそういったケースがあると伝えられてはいたが、平壌のエリート学生が200人も動員されていたという今回の事件には驚かされた。

脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏の著書『平壌資本主義百科全書』によれば、平壌の高級レストランでは髪を金色に染め、ミニスカートにブランド物で着飾った若い女性が「スポンサー探し」を行っている姿が頻繁に見られるという。同著で証言している平壌の富裕層の男性によれば、彼女らの大部分は音大生や歌手の候補生だ。

筆者はこの情報に接したとき、こうした女子学生らの行動は、拝金主義がはびこるようになった最近の北朝鮮社会に生まれた、「現代っ子」たちの「逸脱」なのだろうと感じた。実際にそういうケースもあるのかもしれない。

しかし今回の「女子大生クラブ」事件に関する情報は、女子学生たちの動機が別のところにある可能性を示唆している。事件の顛末を伝えた米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋は、次のように語っている。

「中央教育当局は芸能専門大学に対し、毎日のように経済課業(上納金)の指示を下しており、各大学は学生たちからしょっちゅう、あれこれ名目を付けてカネを集めている。そのため家庭環境の厳しい女子学生たちは、売春に追い込まれやすくなっている」

経済制裁と新型コロナウイルス対策の貿易停止で中央政府が資金難に陥ったことのシワ寄せが、女子学生たちにまで及んでいるということだ。大学の要求に応じてカネを上納しなければ卒業できず、芸能人になって出世し、それまで支えてくれた家族に報いようという夢もかなわなくなる。

金正恩氏は恐怖政治で売春を取り締まるだけでなく、こうした根本的な問題の解決に取り組むべきなのだ。