「500人死亡の修羅場」で見せた金正恩氏の特異なキャラ

金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮が海上で韓国人男性を射殺した事件で、韓国青瓦台(大統領府)は25日、北朝鮮側から同日午前に朝鮮労働党統一戦線部名義の通知文が届き、この中で金正恩党委員長が「文在寅大統領と南の同胞たちに大きな失望感を与え、非常に申し訳なく思う」と表明したと発表した。

北朝鮮が海上で韓国人男性を射殺した事件で、韓国青瓦台(大統領府)は25日、北朝鮮側から同日午前に朝鮮労働党統一戦線部名義の通知文が届き、この中で金正恩党委員長が「文在寅大統領と南の同胞たちに大きな失望感を与え、非常に申し訳なく思う」と表明したと発表した。

ちぎれた手足が…

これを受けて韓国メディアは「北朝鮮の最高指導者が韓国に対し、公に謝罪するのは極めて異例だ」(聯合ニュース)などとする反応を見せている。

聯合によると、北朝鮮の最高指導者が韓国に直接謝罪したのは、1968年に北朝鮮特殊部隊がソウルへ侵入し、朴正煕大統領(当時)の暗殺を狙った事件に対するものぐらいだ。1972年5月、金日成主席が訪朝した韓国の李厚洛(イ・フラク)中央情報部長に対し、この事件を巡って「非常に申し訳ない事件」と謝罪。また金正日総書記も同事件に関し、2002年5月に野党代表として訪朝した朴槿恵氏「申し訳ない気持ち」を伝えた。朴槿恵氏は朴正煕氏の長女である。

しかし実は、こと「謝罪」に関しては、金正恩氏は祖父や父とは異なるキャラクターを持っている。

2014年5月15日、北朝鮮の首都・平壌で、約500人が犠牲になったとされるマンション崩壊事故が起きた。現場のあまりの状態のひどさに遺体の収容作業すら行われないままガレキの撤去が行われ、ちぎれた手足があちこちに転がっていたとされる。

(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

それほどの惨事が起きようとも、以前の北朝鮮当局ならば、徹底的に隠ぺいを図り、党や国家の権威を守ることを優先しただろう。ところが金正恩氏は、犠牲者の遺族を集めた場で建設工事の責任者である当局幹部に頭を下げさせ、その写真を労働新聞に掲載させたのだ。

祖父や父の時代には考えられなかったことだ。

さらに2017年1月1日、金正恩氏は自らの肉声で発表した「新年の辞」の中で、自分の「能力不足」を詫びる。次なるは、朝鮮中央通信が配信した公式訳の一節である。

「いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送りましたが、今年は一層奮発して全身全霊を打ち込み、人民のためにより多くの仕事をするつもりです」

ほとんど「神」と同じように崇められてきた北朝鮮の最高指導者が、自らの能力不足を認めるとは衝撃的だった。

もちろん、このような金正恩氏の振舞いにも「狙い」はあるだろう。今回のケースでは、韓国国民の対北感情が極度に悪化するのを防ごうと考えたのかも知れない。最近の北朝鮮指導部の振舞いを見ると、ときに韓国政府を辛辣に批判しながらも、韓国国民の中にシンパシーを獲得しようとする意図がうかがえるのだ。