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金正恩氏の健康悪化と「女学生パーティー」の秘密

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩夫妻とモランボン楽団(朝鮮中央テレビ)

北朝鮮の金正恩党委員長の健康状態を巡り、重体説や死亡説などの憶測が相変わらず飛び交っている。金正恩氏が最後に公開の場に現れたのは今月11日だから、もうすぐ3週間になる。確かに、長いと言えば長い。韓国政府は自信満々に健在だと言っているが、実際はどうなのか。

女学生たちの涙

そもそも対北融和を目指す文在寅政権は、北朝鮮に対する遠慮からか、金正恩氏の健康状態について分析情報を出してこなかった。

一方、北朝鮮と激しく対立していた朴槿恵前政権時代には、折に触れて、金正恩氏の「健康リスク」に言及していた。

たとえば韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は2016年10月19日の国政監査で、金正恩氏が毎週3、4回ずつ夜通しのパーティー(酒宴)を開き、不摂生な生活と食習慣のために健康不安を抱えており、心血管疾患の高リスク群に入ると報告した。

国情院は同年7月の懸案報告でも、金正恩氏が不眠症や身辺の脅威のために暴飲暴食に走り、成人病にかかっている可能性を指摘。とくに体重について、「2012年に初めて登場したときは90キロだったが、2014年には120キロに、そして最近では130キロまで増えたと推定される」と説明していた。

国政監査で出てきた週3、4回もの「夜通しパーティー」の情報は新しいものだった。それ以前に、金正恩氏がそこまで酒を好むという話も出ていなかったと思う。

もっとも、金正恩氏が秘密裏にパーティーを開いていること自体は知られていた。元NBAのスター、デニス・ロッドマンが訪朝した際には、名門学院から女学生たちをコンパニオンとして動員。彼女たちが陰で泣いていたとの話がある。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

それにしても、週に3、4回というのは異常だ。父親の金正日総書記が、喜び組をはべらせた秘密パーティーを頻繁に開いていたのは有名だが、あれには幹部たちに意見をぶつけさせ、政策を調整する料亭政治のような側面もあったと聞く。

ちなみに、金正恩氏のこのような不摂生をたしなめるのは、妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長だとされている。些細なことで部下を処刑してきた金正恩氏に対しては、たとえ彼自身のためを思ってのことであっても、肉親以外の人間はは強くものを言えないのだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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