北朝鮮「最高指導者の誕生日」に新型ウイルス感染拡大か

金正恩氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

中国を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、北朝鮮は今月16日に光明星節、すなわち金正日総書記の生誕記念日を迎える。金日成主席の生誕記念日である「太陽節」(4月15日)と並び、北朝鮮の体制にとって最も重要な記念日のひとつだ。

北朝鮮の防疫体制が脆弱なことは、つとに知られている。もしかしたらこの記念日が、国内での新型コロナウイルス感染拡大のきっかけとなり、体制に致命的な打撃を与えることもあり得る。

公開処刑を活発化

11日の時点で、北朝鮮において新型コロナウイルスの感染者が発生したとの公式発表はないが、平壌のデイリーNK内部情報筋が、すでに感染者3人が死亡し、18人が隔離治療を受けているとするなど、感染者発生が疑われる情報が複数ある。

光明星節には例年なら、中央記念報告大会や全国各地での講演会、忠誠の宣誓集会など人が多く集まる行事が開かれるが、これら行事が中止される可能性が取り沙汰されている。実際、2月8日の建軍節には、前月下旬まで準備状況が観測されていた軍事パレードが行われなかった。

デイリーNKの平壌の情報筋は「ウイルスの防疫問題のせいで、多くの人が集まる大会は取り消されるのではないか」との話が出ていると伝えた。一方で、光明星節を祝う講演は準備が終わっている状態で、15日に開催予定の中央報告大会は予定通り開催され、道庁所在地でも光明星節の雰囲気を盛り上げるために行事が開かれるとし、どうなるかはもう少し様子を見なければわからないとも伝えている。

また、平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋も、市や郡でのスポーツ大会、芸術団の2.16芸術祝典、忠誠の歌の集まりなどの行事の準備が進められていると伝えた。

北朝鮮の国営メディアは、新型コロナウイルスの感染拡大について詳しく伝え、手洗い、うがい、マスク着用など予防法も紹介している。ただ、どういうわけか「人の集まるところに行くことを避ける」ことは強調されていない。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞でも症状がある人に限って外出自粛を訴えているだけだ。うがった見方をすると、重要な政治行事を滞りなく開催するために、外出制限を行っていないとも取れる。

北朝鮮は新型コロナウイルスの国内での感染拡大を恐れ、中国との貿易を全面的に停止する措置を取った。また、外国人観光客の受け入れも先月22日から中止している。

しかし、貿易の9割以上を中国に依存する北朝鮮は、このままだと国が持たない状況となりうる。そうでなくとも北朝鮮当局は、経済制裁の影響に乱れた治安を抑え込むため、一昨年の末から公開処刑を活発化させている。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

そのような状況下、当局の「判断ミス」で感染が拡大するような事態になれば、国民の不満は一気に爆発しかねない。

一方、北朝鮮国内で話題になっているのは、特別配給だ。北朝鮮では、光明星節に加え、4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)、新旧暦の正月の「4大明節」には、中央機関の幹部には特別配給が行われるのが通例となっているが、今回は全く行われないのではないかとの噂が立っていると情報筋は伝えた。

また、子どもたちには光明星節など重要な政治行事の前にお菓子セットが配布されることになっているが、金正恩氏の誕生日の今年1月8日には配布されなかった。しかし、先月中旬までに各道にある食糧工場でお菓子セットの生産が完了したと伝えられている。

平安南道の情報筋は、国からの特別配給はかなり前に途絶えたが、稼働している工場、企業所や、トンジュ(金主、新興富裕層)が営む事業所では、特別配給が行われており、食用油、小麦粉、豚肉、酒などが配られると伝えた。