北朝鮮「美貌のウェイトレス」らも新型肺炎で苦境に

金正恩氏(朝鮮中央通信)

中国・湖北省の武漢を中心に感染が拡大している新型コロナウイルス。遠く離れた中国東北でも感染が広がり、6日の時点で遼寧省94人、吉林省65人、黒龍江省277人の感染者が確認されている。

中国政府は、感染拡大を防ぐために、先月30日までの予定だった春節(旧正月)の連休を今月2日まで延長する措置を取ったが、さらに延長された。例えば遼寧省政府は、省内の企業と学校に対し、9日まで休暇を延長せよとの指示を出している。これが、中国で働く北朝鮮労働者や事業体に、国家への上納金を稼げなくなるなどの深刻な影響を及ぼしていると、デイリーNKの対北朝鮮情報筋が伝えた。

遼寧省や吉林省では、美人ウェイトレスをカンバンにして来た北朝鮮レストランの営業と、北朝鮮労働者が働く工場の稼働が中断され、関係者全員が自宅から出られなくなっている。つまり、隔離状態に置かれているということだ。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

10日以降は平常通りに戻ると情報筋は見ているが、各地の地方政府は、春節期間中に他の地方に行ってきた人に対して2週間の隔離措置を取っているため、実際に工場の稼働が再開されるのは、それ以降になる可能性がある。同じ工場で働く中国人が他の地方から戻ってくれば、隔離措置される。また、国内移動が制限されているため、戻ってこれない可能性もある。

工場が止まっていると言っても、北朝鮮政府に収める忠誠の資金、つまり上納金が減らされるわけではない。すでに貿易関係者たちは、いかにして上納金を収めるか頭を悩ませている。

「当局に『1月末まで第1四半期の忠誠の資金を準備せよ』と指示されたので送金したが、急に(新型コロナウイルスによる)肺炎が拡散し、レストランや工場が止まっているので、資金が枯渇し、残りの忠誠の資金を期日までに準備するのは難しい」(貿易関係者)

別の情報筋は、先月18日に中国駐在の北朝鮮大使館が海外奉仕部門(レストラン)のイルクン(幹部)に、「(労働)党の信任と期待に応じて、高い政治的自覚と外貨稼ぎ計画の超過達成で恩に報いるべきだ」と通告している。

それを受けて、本来は24日から30日までが春節の連休となるが、休みを2日間に短縮した。他のレストランは春節期間中に長期休業に入るため、行く場を失った客を吸収する考えだったのだろうが、ウイルスの拡散で外出する人は少なく、あてが外れてしまったものと思われる。

だからといって「肺炎を理由に資金の確保に失敗したと弁明できない」(情報筋)のだ。総和(総括)で成績が悪いと指摘されたら、二度と海外に戻れなくなり、地方の閑職に飛ばされることすらある。

2015年の末、ロシアのウラジオストクに派遣されていた北朝鮮労働者が自ら命を絶つ事件が起きた。ルーブル安で受け取る給料が減ったのに、忠誠の資金の額が米ドルで設定されているため、負担が増えたことを苦にしての自殺と思われる。

なんとか第1四半期の忠誠の資金の資金は納めたものの、生活資金がなくなり、一部の幹部や労働者は日々の食事すらまともに取れない状況となっている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、中国のレストランに娘を送り出した平壌に住む親が、娘の窮状を知り、中国側の業者を通じて生活費を送っていると伝えた。

中国の丹東税関の向かいに住む住民は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、今月4日午後3時ごろに、北朝鮮労働者と思しき若い女性約50人が中国に入国するのを見たと答えた。先月20日から24日の間に、1日平均500人が北朝鮮に帰国していたが、50人はその一部で、ビザの更新による再入国と思われる。

また、対岸の新義州(シニジュ)在住の華僑もRFAの取材に、春節の連休の1週間ほど前に労働者が一斉に帰国し、指定されたホテルに隔離されたが、外貨稼ぎの必要性に加えて隔離場所の不足で、中国に出国させられた模様だと伝えた。ホテルでは、1部屋に9人が収容されるなど、劣悪な状況だった模様だ。