「男たちは役立たず」財布のヒモを握った北朝鮮女性たちの逆襲

金正恩夫妻とモランボン楽団(朝鮮中央テレビ)

「男なんて半人前」

「お前なんかいたところで穀潰しだ。いないほうがいい」

これは、最近の北朝鮮男性が女性から投げつけられる言葉だ。男尊女卑が根強く、女性が虐げられてきた北朝鮮で何が起きているのかを、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

なくならない性暴力

北朝鮮では、学業や兵役を終えた男性はすべて、国の機関、国営企業などに配属されることになっている。「無職」であることは許されないのだ。所属する機関に出勤しないことは違法行為であり、処罰の対象になる。法律には、次のような条文まである。

行政処罰法第90条(無職、遊び人行為)

正当な理由なく、6ヶ月以上派遣された職場に出勤しなかったり、1ヶ月以上離脱した者は、3ヶ月以下の労働教養をさせる。罪状の重い場合には、3ヶ月以上の労働教養をさせる。

個人で商売をしていても、配属された職場に出勤しなければ処罰される。一方で、女性は必ずしも職場に通う必要はない。これ自体は女性に対する差別的な処遇と言えるが、性別を問わず出勤が義務付けられていたならば、北朝鮮経済はとっくの昔に崩壊していたかもしれない。「職業のない」女性が市場で商いに精を出すことで、草の根資本主義の牽引役になってきたからだ。

北朝鮮の配給は基本的に、職場単位で行われていた。つまり、男性がいてこそ配給が受け取れた。男性が「誰のおかげで食えると思っているんだ」と大口を叩ける所以だった。その状況が変わったのは、1990年代後半の食糧危機「苦難の行軍」の頃だ。

配給が止まってしまい、自分の力で生きる術を持たなかった多くの人々が飢えに苦しみ死んでいった。そんな状況でも男性は職場に出勤せざるを得なかったが、女性は市場に行って商売し、現金収入を得ることで家族の命をつないだ。

「一家の大黒柱」と化した女性の家庭内の地位は上昇した。一方で、まともに稼げない男性の地位は低下した。

「企業所が正常に稼働していたり、配給がきちんと出ていたころには、男性は肩で風を切って歩いていたが、そうではない今では力がない。一方で女性は、『苦難の行軍』を経て相対的に強くなった」(情報筋)

結婚観も大きく変わり、配偶者の選択において女性が主導権を握るようになっている。

情報筋の目には、最近の北朝鮮男性がやつれ気味に見えるようだ。その理由を「妻の作った食事しか食べられないから」と述べた。満足な食事を出されていないのだろう。一方で女性は「市場に行って餅やトウモロコシ(で作った料理)を食べているので、徐々に健康になりつつある」とのことだ。

「女性たちは、少しでも商売がうまくいけば、子どもたちに食べさせようと食べ物を買っていく。働くのは子どもたちや自が食べていくためであり、男性のことは頭にない」(情報筋)

このような変化を後押ししたのは、韓流だという分析も存在する。

北朝鮮の女性の間で「(北)朝鮮の男どもは、力もないくせしてメシ食ってばかり」「酒飲んで帰ってきては女を殴る」という評価が主流というのが、情報筋の見方だ。

一方で、韓流ドラマや映画の中の男性は「女性に優しい」との評価で、「南の男性と北の女性が結婚すれば、両方が『(家事は)自分がやる』と言い出しそう」という声も聞こえるという。

経済的な地位は向上しても、炊事、育児などが女性に押し付けられる状況が変わらない現状で、韓流ドラマ、映画の中の韓国男性は家庭を共に支える素敵な存在として見えているようだ。一方で、北朝鮮男性は無能で暴力的、権威主義的という散々な評価だ。一向に変わろうとしない男性に対する女性の反乱ともいうべき状況だ。

もっとも、財布の紐を握るようになったとは言え、女性がドメスティック・バイオレンスや性暴力の被害に遭うという状況に変化はない。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為