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金正恩氏あざ笑う「落書き事件」北朝鮮で頻発

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮国内で、金正恩党委員長を嘲弄する「落書き事件」が頻発しているという。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が中国を訪問した平安南道(ピョンアンナムド)の住民の話として伝えたところでは、「わが国の体制や朝鮮労働党を非難する落書き事件が多くの地域で継続的に発生している。先月末、中国との国境地帯の公共施設で金正恩を露骨に非難する落書きが発見され、保衛部(秘密警察)などの司法機関が大騒ぎになる事件があった」という。

この住民によれば「しかし保衛部は落書き事件の犯人を逮捕することも、落書き事件のニュースが住民の中に広がることを防ぐのに躍起だ。その理由は、このような事件は犯人逮捕が容易でない上に、大々的な犯人捜しをすれば事件の情報が一気に広まってしまうためだ」とのことだ。

「わが国の体制や党中央(金正恩氏)を非難する落書き事件は、ほかのどのような犯罪よりも重大視されるが、それでも犯人が逮捕されるケースは非常にまれだ。ただ、(情報の抑え込みが奏功して)事件が発生した地域の住民でさえ気づかない場合が多い」

北朝鮮では、最高指導者の権威を傷つける行為は政治的事件として扱われ、処刑や政治犯収容所送りなどの厳罰が下されることも珍しくない。しかし当局にとって重要なのは、そのように重罰で裁くよりも、最高指導者と体制の権威を軽んじる空気が出て来ないようにすることなのだろう。

では、落書きの内容は具体的にどのようなものなのか。

「過去の落書き事件の例で言うと、豚の胴体に頭の部分は金正恩の顔を描いてみたり、『朝鮮労働党(チョソンロドンダン)万歳』とすべきところを『朝鮮(チョソン)チャンマダン(市場)万歳』と書いたりという具合に、さまざまな方法で金正恩と党を嘲笑している」(前出の住民)

(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

一方、新義州(シニジュ)在住の華僑も「朝鮮のあちこちで体制非難の落書き事件が起きているが、犯人が逮捕されたというニュースは、ほとんど聞いていない。犯人を逮捕したのに発表しないだけかもしれないが、それよりは、事件の性質上、犯人逮捕が難しいためであると理解している」と語っている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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