北朝鮮で「お守り」として大人気の韓国5万ウォン紙幣

韓国の5万ウォン紙幣(写真:ロイター/アフロ)

日本人はどういうわけか、「三」という数字を好む。例えば、「日本三大○○」として、ベスト3を決めようとする。日本三大祭と言えば祇園祭、天神祭、神田祭が挙げられるが、どれを入れるか入れないかで議論になったりもする。対象を海外にも広げ「世界三大◯◯」などとランキング付けをするが、海外の人には馴染みのない概念だ。

一方の北朝鮮で好まれる数字は「五」だ。「五大革命歌曲」「五大名山」「五福」などがあり、5や10で割り切れる整周年と呼ばれる年も重要視され、特別な行事が行われる。1990年代からは、結婚の結納品の入った「ハム」と呼ばれる箱にも、5の数字が入ったお金を入れる習慣ができた。そしてそこに入れるのは、朝鮮中央銀行発行の5000北朝鮮ウォン紙幣ではない。韓国の5万ウォン(約4700円)紙幣だ。

2009年から発行されている5万ウォン紙幣は、朝鮮王朝時代の儒学者である李栗谷(イ・ユルゴク)の母で書画家の申師任堂(シンサイムダン)の肖像画が描かれ、黄色がかった金色の色調だ。ちなみに、李栗谷は5000ウォン紙幣の顔に選ばれており、親子で現行紙幣4種類の半分を占めていることになる。

地味な5000北朝鮮ウォン紙幣と異なり、上品な金色の紙幣が、「金運を呼び込む」と評判なのだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、韓国の5万ウォン紙幣は、金色と五という数字が幸運を呼ぶと人気で、密輸業者を通じて中国から取り寄せられるとのことだ。

ただし、韓国紙幣の所有は危険な行為だ。韓国とのつながりがあるスパイと疑われかねない。また、お守りの類の所有は、刑法256条の迷信行為罪にあたり、3年以下の懲役刑となるばかりか、スパイ容疑をかけられれば死刑にされるおそれすらある。

(参考記事:北朝鮮で拡散する「2019年金正恩終末論」

それに、韓国の紙幣を持っていたところで北朝鮮国内では使えないこともあって、欲しがる人もいないが、5万ウォン紙幣だけは別だという。

「普段、所有者は他の人に見つかるまいと、(5万ウォン紙幣を)家に保管しておくが、仲の良い親戚や、信用するに足る人が来れば、取り出して自慢する」(情報筋)

「5万ウォンが金運を呼び込むらしい」という噂が密かに広まり、情報筋の友人も、中国と北朝鮮を行き来する知人に5万ウォン紙幣の入手を依頼したとのことだ。しかし、そもそも北朝鮮の人にとって5万ウォンは高額である上に、持ち歩いて発覚するリスクを考えると、北朝鮮での取引価格は実際の価値より高くなる。売り手の言い値で取り引きされるという。

北朝鮮ウォンは子どもにもあまり好まれず、外貨が好まれるが、商人は、手元に5000北朝鮮ウォン紙幣が入ってくれば、ハングルでBかJに当たる文字が入っているかを確認する。プジャ、つまり金持ちに繋がるという意味の験担ぎで、わざわざ探して集める人もいたそうだ。