警察出動に発展した北朝鮮男性の「食文化」トラブル

金正恩氏(写真:代表撮影/Pyeongyang Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

今年3月、東京・江戸川区で32歳のベトナム人技能実習生が鳥獣保護法違反で書類送検された。昨年8月に野生のカルガモを食べるために捕獲した容疑だ。取り調べに対しこの男性は「日本食が口に合わなかった」と動機を述べている。

このような食文化を巡るトラブルは、世界各地で起きている。それはロシアに数万人いると言われている、北朝鮮から派遣された労働者とて例外ではない。

ロシア・サハリン州の地元メディア、サハリン・インフォは、犬を公共の場で屠畜した容疑で北朝鮮労働者が摘発されたと報じた。

(参考記事:ペット盗難多発で「北朝鮮機関」に疑惑の目…アフリカ・ナミビア

事件が起きたのは、州都ユジノ・サハリンスクの北に隣接したノボ・アレクサンドロフスクだ。今月13日午後8時半ごろ、川を散歩していた人がアジア系の男性2人が、木から犬を吊り下げて屠畜している様子を目撃し、警察に通報した。

2人はロシア語はほとんど理解しない様子で、警察官に北朝鮮のパスポートと滞在ビザのコピーを示した上で、社長(おそらく北朝鮮当局の指導員)の女性に携帯電話で連絡を取った。社長は「私の犬だが、要らないからあげた」と話したという。

サイトに掲載された動画には1人の男性が朝鮮語で「飼い主から食べろと言ってもらったのに」と朝鮮語で話す様子が撮影されている。

警察官は公共の場で犬を殺すことは違法だと告げて、連行しようとしたが、それを聞いた3人は笑いだし、連れて行ってくれたら警察署の修理をしてやると冗談で返したという。しかし、裁判にかけられることになってようやく3人は事態の深刻さを認識したようだ。

2017年に改正されたロシア連邦刑法典第245条は、動物に対する虐待行為に対して最大で禁固刑3年未満と定めている。3月にはモスクワ郊外で、犬20頭を盗み屠畜した容疑で北朝鮮人3人が逮捕されたと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

犬は朝鮮半島、中国東北、ベトナムを中心に食肉として利用されてきたため、北朝鮮労働者は犬の屠畜が問題になることを理解できなかったようだ。一方で、犬食を忌避する文化圏もあり、犬肉は文化的摩擦を生じさせやすいものだ。

2015年の春、リッパート駐韓米国大使が暴漢に襲われた際、70代の韓国人男性が犬肉のスープを病院へ差し入れしようとして拒否される出来事があった。気持ちは分からなくもないが、大使が愛犬家として知られていることを考えれば、これはやはり配慮が必要だった。

(参考記事:米大使襲撃事件で韓国社会が危機感 回復祈って踊りに犬肉・・・「やり過ぎ」との声も

日本人にとってのうなぎのように、夏の三伏(サムボク、日本の土用の丑にあたる)に精のつく食べ物として犬肉が愛されてきた韓国でも、状況は大きく変わりつつある。

昨年5月、韓国の動物保護団体「動物解放の波」と米国の国際動物保護団体・LCAが世論調査機関韓国リサーチに依頼して行った世論調査で、犬の食用に反対する人が46%で、賛成の18.5%を圧倒した。一方で「どちらでもない」と答えた人も35.5%だった。

「犬肉を1回でも食べたことがある」と答えた人は59.5%に達したが、「この1年間、全く食べていない」と答えた人は68.4%、「1ヶ月以内に食べた」は1%、「2~3ヶ月以内に食べた」2.9%、「1年以内に数回食べた」が26.7%で、その中でも35.6%は「犬肉とは知らずに食べた」と答えた。この結果は、犬肉が韓国人の食卓から消えつつあることを示している。

一方で、韓国のCBSが昨年8月に行った世論調査で、犬肉食用禁止法について反対が51.5%、賛成が39.7%と答え、法による禁止には抵抗感を持つ人が多いという結果となった。