風俗街へと変貌を遂げた「金正恩の都」の北の玄関口

金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮の首都・平壌駅から北に向かう列車に乗って3駅目。間里(カルリ)駅は、新義州(シニジュ)から来た平義(ピョンイ)線と羅先(ラソン)から来た平羅(ピョンラ)線が交わる平壌の北の郊外の交通の要衝で、北の玄関口だ。

この間里駅周辺が、平壌の風俗街に変貌を遂げたと噂されていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

その舞台となっているのは「待機宿泊」だ。これは、劣悪な電力事情により頻繁に立ち往生する列車の運行再開を待つ客に、宿と食事を提供する一種の民泊だ。

駅前に数十軒、駅から南東に数百メートル離れたところにも数十軒の民家が存在し、その間には数棟のマンションがあるが、北朝鮮の事情に明るい中国の情報筋によると、それらの中に数多くの待機宿泊が存在する。

宿のオーナーは駅前で客に「待機しませんか」と声をかけて連れて行く。自宅の部屋を仕切った客室に案内し、食事の注文を聞くと同時に「可愛い子がいるので、一緒に酒を飲みませんか」と声をかけるという流れだ。

料金体系には時間制と一晩制というものがあり、それぞれ10ドル(約1080円)、30ドル(約3250円)だ。受け取ったカネは宿のオーナーと女性が山分けするとのことだが、女性が搾取される事例も少なくないと思われる。

この待機宿泊はよほど儲かるようで、「カネに余裕がある人は、間里に家を数軒買って待機宿泊に改造する」(情報筋)だという。

平壌市内では非常に厳しい宿泊検閲(無断で他人を泊めていないかの検査)が行われている。オーナーが摘発されることはまずないが、売春を行っていた女性は、摘発されれば客から受け取ったカネは全額没収され、労働鍛錬隊(懲役)3ヶ月の刑になる。

しかし、間里は郊外とあってかなり取り締まりがゆるい。また、糾察隊や保安署(警察署)の取り締まりもあるが、ワイロさえ掴ませておけば見逃してもらえるとのことだ。

(参考記事:美女と「日本製の部屋着」に狂わされた、ある北朝鮮警察官の選択

待機宿泊で働いているのは平安道(ピョンアンド)や慈江道(チャガンド)出身の10~20代の女性で、その多くが借金取りに追われて、あるいは家族を食べさせるためにこの間里にやって来るという。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

また、彼女らがこの間里にやって来るのにはこのような理由もある。

「自分の住んでいるところで売春で摘発されれば労働鍛錬隊送りになり恥をかかされるので、ここまで『遠征』してくる」(情報筋)

性暴力被害者ですら「落ち度があったからやられたのだ」とみなす北朝鮮の社会風土で、売春をしていたことが地域社会に知れ渡ればその結果は火を見るよりも明らかだ。そんなリスクを避けて女性たちは間里にやって来るということだ。

それでも北朝鮮において売春が極めてリスクの高い職業であることには変わりない。

「市場で避妊薬は売られているが、まだコンドームはあまり売られていない。避妊具もないままで売春を強いられている」(2017年に脱北して韓国にやってきた男性)

実際、手軽に使える避妊器具であるコンドームは、北朝鮮でもとても人気が高いのだが、当局は「わが国に売春など存在しない」との建前を振りかざし、コンドームの輸入・製造・販売を認めようとしない。また、男性の間でも「コンドームは必須」という意識が希薄だと言われている。それで性感染症の温床になっている。

さらに、金正恩党委員長は低下する一方の出生率向上のために、「避妊と妊娠中絶を禁止せよ」という指示を下したと伝えられている。違反者はなんと懲役3年の刑に処されるという。

北朝鮮で売春に従事する女性たちは、保安署による取り締まり、宿の主人による搾取、客の男性による暴力、性感染症など、何重もの苦しみを強いられているのだ。

(参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに