「レーダー照射」問題どころじゃない…韓国軍「深刻な穴」がまた露呈

韓国の文在寅大統領(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の漁船1隻が「東海(日本海)北方限界線」を越えて約150キロも南下したのに、韓国軍と海上警察がこれを捕捉できていなかったことが明らかになり、韓国国内で海上警戒態勢の「穴」が問題になっている。

北方限界線(NLL)とは、朝鮮戦争休戦後の1953年8月30日に、朝鮮半島上の軍事境界線を延長する形で海上に定められた境界線。韓国では西側の黄海上の境界線は「西海北方限界線」、東側の日本海上の境界線は「東海北方限界線」と呼ばれている。

昨年12月に発生した「レーダー照射」問題で海上自衛隊とつばぜり合いを繰り広げてきた韓国軍だが、同国内ではむしろ、国防行政のずさんさが問題視されてきた側面もある。今回の件でまたもや、そうした実態が明らかになった形だ。

(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

韓国メディアの報道によれば、漁民4人が乗った北朝鮮の漁船が15日の午前6時50分ごろ、江原道(カンウォンド)三陟(サムチョク)港の近海で操業中だった韓国の漁船に発見された。北朝鮮漁船は操業中の機関故障で、東海NLL以南まで漂流したという。軍と海上警察、国家情報院などで構成された政府合同審問団が、三陟港に曳航された漁民からの聞き取り調査を行っている。

韓国では、陸軍が東海岸一帯で沿岸部の監視網を運用しており、海軍艦艇や海洋警察の警備艇が北朝鮮に対する海上哨戒を行っている。東海NLLと三陟港の間には、襄陽(ヤンヤン)空港や主要港などの重要インフラがあり、また海軍第1艦隊司令部、空軍江陵(カンヌン)基地などの軍事施設がある。発見されたのが北朝鮮の漁船ではなく、特殊部隊員の浸透を目的として運用されている工作船や、韓国軍の警備態勢を監視する偵察船だったら安全保障にも影響を及ぼした可能性を排除することはできない。

中央日報(日本語版)15日付は、韓国政府筋の次のような説明を伝えている。

「政府筋は『北の漁船は小さな木造船』とし『レーダーでは確認しにくいうえ、東海では多くの漁船が動いているので海軍が発見できなかったようだ』と伝えた」

確かに、北朝鮮の漁船は見つけにくいのかもしれないが、そのことは北もよくわかっている。ということは、北朝鮮が韓国への浸透を試みる際には漁船に偽装した木造の船舶を使う可能性が高いということであり、それを見分ける能力こそが韓国軍には必要であるということだ。それに、韓国軍が北朝鮮の兵士や艦艇を捕捉できなかったり、確認に手間取ったりした前例はいくつもある。

韓国では、国防が政争や汚職の犠牲になり、軍が備えるべき能力を備えられない事態が続いている。

(参考記事:日韓「レーダー照射問題」の背後にある韓国政治の闇

北朝鮮は、核兵器を除けば弱体であり、正面からぶつかれば米韓や日本の敵ではないだろう。

(参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

しかし、国民世論や社会の空気に政治が影響される民主主義国家は、テロや工作活動による揺さぶりに脆弱な面もある。いくら南北対話の途上にあるといっても、北朝鮮が自国の優位を求めて、いつそのような行動に出ないとも限らない。

韓国軍の能力が盤石であってこそ、南北対話も国際社会からの信頼を得られると韓国政府は知るべきだ。

(参考記事:日本の「軍事大国化」に震える韓国と北朝鮮