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違法薬物に手を出した「エリート」たちのどん底ぶり

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
イメージ写真(写真:アフロ)

国際社会の制裁が一向に解除されず、北朝鮮庶民の生活に影響が出ていることが伝えられているが、苦しいのは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍官(将校)も同じだ。彼らは、少しでも生活の足しにするために、覚せい剤の運び屋となっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、咸興(ハムン)に本部を置く第7軍団の軍官が、列車内で覚せい剤を持っているところを発見され、摘発、処罰される事件が起きた。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。

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兵士、中でも軍官は民間人とは異なり、列車内で荷物検査を受けることはほとんどない。商人はそこに目をつけ、軍官を抱き込んで、かなりの額の報酬と引き換えに運び屋をやらせている。

これは、軍官の生活が非常に厳しいことが原因だ。

軍官はかつて、北朝鮮の代表的なエリートだった。しかし最近では、小遣い銭にしかならない給料しか受け取れなくなっている。それは工場、企業所、機関に勤める民間人とて同じだが、軍人と決定的に違うのは商売をすることで収入が得られるという点だ。

軍人は商売が禁止されている。ただし、家族はその対象外なので収入を得るために商売をしているが、軍人の勤め先は人里離れた山奥にある場合が多い。村の市場に行って商売したところで人口が少ないため、大した収入にはならないのだ。

そんな窮状を知る商人は、軍官に運び屋の仕事を持ちかける。軍官も生活苦から抜け出せるとの思いで、誘惑に負けてしまうというのだ。ちなみに第7軍団が駐屯する咸興は、覚せい剤の産地として知られている。

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このような現状に、軍当局も頭を抱えている。

「このような違法行為は、出張の多い軍官の間で多く行われており、一部の軍官に至っては、様々な言い訳をして出勤もせずに商売にのめり込んでいる。軍当局も摘発に手を焼いている」(情報筋)

現地の別の情報筋は「軍官が違法な商売に手を染めるのは昨日きょう始まったことではない」と伝え、当局は違法行為根絶のために検閲(監査)を行ったり、対応策を練る会議を頻繁に開いているが、根本的な解決策はなく、事態はむしろ悪化していると述べた。

「やはり、軍幹部の暮らし向きに目を向ける必要がある」(情報筋)

末端の兵士に至っては、食糧すら配給されず、腹をすかせて民間人を襲撃する事態となっている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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