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「エリート女学校長は少女達を性の玩具として差し出した」北朝鮮幹部が証言

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

本欄では先日来、韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の自叙伝『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(原題)の内容に言及しているが、同書には実に驚くべき記述があふれている。

たとえば金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長の粛清を巡っては、1万人余りが連座させられ、粛清されたとされている。太永浩氏によれば、そこには「映画『幹は根から育つ』に出演した女優をはじめ、張成沢の“オンナ”であると見られた何人もの芸能人が逮捕され、姿を消した」という。

ここで言われている女優とは、一時は北朝鮮の銀幕スターだったキム・ヘギョンのことだ。

(参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

彼女の悲惨な運命については、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表も詳しくレポートしており、粛清情報は太永浩氏の証言と一致する。

そしてより驚くべきは、太永浩氏の次の証言である。

「万景台(マンギョンデ)区域にある金星高等中学校の校長も、『中央党5課』に選抜された幼い女学生たちを、張成沢の性のオモチャとして差し出したとの理由で逮捕された」

金星高等中学校は、金正恩氏の美貌の妻・李雪主(リ・ソルチュ)氏も卒業したエリート女学院、金星学院の一部だ。音楽家や舞踊家などを養成しており、海外のスポーツ大会に派遣される「美女応援団」のメンバーも、大部分がここから選抜される。

(参考記事:【写真特集】北朝鮮の美女応援団2018

海外に出る学生たちは当局により厳しいチェックを受けるが、中には違った意味で「管理」される少女たちもいる。それが、「5課対象」と呼ばれる学生たちだ。

(関連記事:帰国した北朝鮮「美女応援団」を苦しめる「水抜き」作業とは何か

ここで言われる「中央党5課」は、要するに「喜び組」などを選抜・管理する部署だ。太永浩氏はこの組織についても詳しく解説しているのだが、それについては次の機会に言及したい。

金星学院の学生たちが、「秘密パーティー」のコンパニオンとして動員されているとの話は、以前から聞いていた。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

しかし、ここまで露骨な証言は初めてである。張成沢氏に死刑を宣告した特別軍事法廷は、同氏が数多くの女性と不倫関係を持ち、数百万ドルを海外での博打で蕩尽し、違法薬物を服用したと指摘した。そうした内容を含む判決は全文が労働新聞で公開されており、それを読んだ北朝鮮国民は、張成沢氏個人よりは権力層の腐敗した実態に激怒したとされる。

金正恩氏は叔父に手をかけることにより、はからずも、金王朝の暗部を自ら暴いてしまったというわけだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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