金正恩氏も「チンピル」文書で嘆く北朝鮮「性の乱れ」の深刻度

金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮で売買春が拡大したのは、1990年代中頃からのことだ。「苦難の行軍」と呼ばれる大飢饉を背景に、家族を養うため女性が売春に走らざるをえない状況が生まれたのだ。

その後、食糧難は改善に向かったものの、いまも似たような状況が残っている。社会主義的な計画経済が破たんし、なし崩し的に市場経済化が進む中で貧富の差が拡大。農村や貧困層の女性たちの中には、売春でもしなければ食べていけない人々が少なからずいるのだ。

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サウナなどで「変態行為」

その一方、そうした女性たちを吸収し、売春がひとつの産業と化している実態もある。そして、そのような動きを強く懸念しているとされるのが、金正恩党委員長だ。

脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表は最近、2016年9月9日に出された金正恩氏の「チンピル」指示書を入手したという。「チンピル」とは、漢字では「親筆」となり、金正恩氏が直接決済のサインを書いたという意味だ。

李代表が入手したとするチンピル指示書のタイトルは、「奉仕網で起きている退廃的で変態的な行為をなくすための闘争を強く繰り広げるための対策案」となっている。奉仕網とは、朝鮮労働党や朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、内閣、各種団体などが運営するレストラン、カフェ、スーパー銭湯などの収益事業(奉仕機関)を一括りにした呼び方だ。

文書はまず、「昨今の奉仕網における違法な奉仕活動により、社会の健全な道徳気風、生活気風を乱す現象が起きている」と指摘。続いて次のように、その実態を告発している。

「食堂、清涼飲料店などの一部の奉仕機関では、個室、マッサージ室、サウナなどを利用し、夜間奉仕などの違法な奉仕活動を行い、売淫(売春)、賭博行為など退廃的で変態的な行為を助長している。奉仕員たちの色情的で醜い行為で客をひきつけていることをはじめとして、奉仕機関では社会主義制度のイメージを乱す現象が少なからず起きている」

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李代表が北朝鮮国内の関係者の話として伝えたところでは、このような現象は首都平壌のみならず、南浦(ナムポ)、平城(ピョンソン)などの平壌周辺の都市、清津(チョンジン)、咸興(ハムン)、新義州(シニジュ)などの地方の大都市や、さらには郡部にまで広がっているという。

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この問題の根が深いのは、こうした売春ビジネスの多くが、有力機関の大幹部たちの庇護を受けているところにある。前述したとおり、奉仕網は党や軍、行政機関の収益事業として営まれている。それはつまり、売春ビジネスが党・軍・行戦機関の収入源になっているということだ。

金正恩氏は、おそらくはこのような問題点を知った上で、懸念を募らせているものと思われる。実際、これまでにも繰り返し、売春根絶の指示を下しているのだが、一向に効果は表れていない。

件のチンピル指示文で示された対策は、次のような内容だ。

これに対して金正恩氏は次のような対策を提示した。 (1)中央党(朝鮮労働党中央委員会)による集中検閲を行う (2)「うちは特殊だから」と誠実に検閲を受けようとしない機関に対しても、最後まで追及する (3)10月までに集中的に行う (4)問題が発覚すれば、営業停止や廃業などの強い措置を取る

なんだか、やる気があるのかないのかも良くわからない、あやふやな内容だ。もしかしたら、売春ビジネスを収入源とする大幹部たちにより、骨抜きにされた結果なのだろうか。

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