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北朝鮮「美女応援団」が特訓を開始…厳しすぎる選考基準

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
2002年の釜山アジア大会に参加した美女応援団(写真:アフロ)

韓国と北朝鮮は9日、板門店で行われた南北高位級会談において、北朝鮮側が来月開催の平昌冬季五輪に高位級代表団と選手団、応援団などを派遣することで合意した。

北朝鮮の応援団と言えば、「美女応援団」が有名だが、デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によると、すでに平壌では平昌に派遣される美女応援団の訓練と教育が開始されているという。

「平昌五輪に派遣される応援団の書類選考は、昨年末までには内々に終えられていた。南北合意が10日に国内メディアで報道されると、平壌市内の体育館で本格的な訓練と教育が始まった」(情報筋)

身長165センチ以上

今回、美女応援団の派遣が実現すれば、韓国を訪れるのは13年ぶりとなる。過去には2002年の釜山アジア大会、2003年の大邱ユニバシアード、2005年の仁川アジア陸上選手権大会に参加。いずれも大きな話題となった。また、2005年の応援団には、後に金正恩党委員長の妻となった李雪主(リ・ソルチュ)氏も含まれていた。

(参考記事:【写真特集】李雪主――金正恩氏の美貌の妻

情報筋によれば、今回の応援団もこれまでと同様、芸術分野の人材育成センターである金星学院と平壌演劇映画大学の学生や卒業生が動員される見込みだという。

応援団に参加したがる女性は大勢いるというが、選抜条件は厳しい。

「美人でなければならず、身長が165センチ以下ではダメ。脱北した者が身内にいてはダメで、出身成分(身分)も厳しく見られるが、メンバーは大多数がエリート校である金星学院から選ばれるので、この点は問題ないだろう。しかし決め手は財力だ。選考書類を作る党の担当者に払うワイロの額で、最終的な当落が決まる」

北朝鮮では何をするにもワイロが必要になるが、とくに女性に対してはきわめて犯罪的な行為が強要されることもある。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

まさかエリート揃いの金星学院出身者にそこまでの要求があるとも思えないが、元NBA選手のロッドマン氏の訪朝時には秘密パーティーで辛い目に遭わされたとの情報もあり、心配は尽きない。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

一方、北朝鮮当局は彼女たちに対する思想教育も行っている。その中身は、「核強国となった共和国の力を文化の威力においても誇示せよ」「対北制裁に同調する世界の国々の認識を変えよ」というものだという。

「今回の応援団は従来のスタイルから脱し、韓国のガールズグループにも負けないダンスを披露するようだ。北朝鮮の芸術が世界的水準にあることをアピールして、国際社会の視線を釘付けにしようとしている」(情報筋)

いずれにしても、彼女たちには核問題などを巡り何ら責任を問われるいわれはない。質の高いパフォーマンスを見ながら、たまには北朝鮮の人々との交流を楽しむのは悪くはなかろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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