「愛国心、米ドルで売ります」…金正恩氏が始めた「珍商売」とは

金正恩氏(労働新聞より)

中国の習近平国家主席(中国共産党総書記)の特使として、同党の宋濤対外連絡部長が17日から、北朝鮮を訪問している。訪朝の表向きの目的は、10月に開かれた第19回中国共産党大会の結果を北朝鮮に伝えることだという。

しかし、北朝鮮に対する制裁に消極的だった中国が、ここ最近、米国をはじめとする国際社会の圧力路線に協調する姿勢を見せているだけに、両国の間でどのような話が交わされるのか注目される。

そうでなくても、中国の制裁強化の影響は、徐々に北朝鮮国内に及びつつある。

美貌のウェイトレス

中国商務省は9月28日、核・ミサイル実験を強行する北朝鮮に対する制裁の一環として、北朝鮮の個人や団体によって中国国内に設立された合弁企業などに対し、決議採択の日(現地時間9月11日)から120日以内の閉鎖を求める通知を出した。

これに伴い、中国に100店舗あると見られている北朝鮮レストラン、通称「北レス」が相次いで閉店している。北朝鮮当局が中国や東南アジアなどに展開する北レスの最大の売りは、ウェイトレスも兼ねた美貌の女性従業員たちによる歌や踊り、楽器演奏などのショーだった。

近年では、特に容姿端麗なウェイトレスの写真がネットで出回り、韓国の若者たちの間でアイドル並みの人気を博したこともあった。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

今年中に全店舗が閉鎖されるとなれば、北朝鮮の外貨稼ぎは大きな打撃を受けることになる。

厳しい状況になることを予想してか、北朝鮮の支配政党である朝鮮労働党は「愛国」をエサに北朝鮮の庶民から外貨を絞り取ろうとしている。韓国の大手紙・朝鮮日報によると、朝鮮労働党は、最近「愛国者証」なるものを製作し、多くのドルを上納した市場の商人に与えはじめたという。

市場の商人たちは、労働党創建日(10月10日)など、北朝鮮の主要記念日ごとに一定金額の米ドルを上納すれば愛国者の称号を受ける。愛国者証をもらった住民は、本人や家族が犯罪を犯しても、減刑になるなどの特典が与えられるとのことだ。

性上納を強要

一方、北朝鮮の秘密警察である国家保衛省(以下、保衛省)や人民保安省(以下、保安省)などの治安機関は、実にあこぎな方法で、庶民からあらゆるモノを奪う。

保衛省も保安省も本来の任務は治安維持だ。しかし、貧乏国家・北朝鮮の一部署であることから予算は少なく、逆に国家に上納金を納めなければならない。

その上納金は、拷問で顔面を串刺しするほどの比類なき暴力性で、北朝鮮の富裕層や一般庶民、そして、裏表問わず、商売人から収奪するのだ。まさに「恐喝ビジネス」である。

(参考記事:口に砂利を詰め顔面を串刺し…金正恩「拷問部隊」の恐喝ビジネス

なかには、覚せい剤の密売や密輸に目をつぶり、その代価として巨額のワイロを受け取る治安機関の幹部もいる。この幹部は権力を笠に着て、覚せい剤の運び屋をしていた20代、30代の女性らを脅し、性上納(性的接待)まで強要しているというのだ。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

北朝鮮当局のあこぎなやり口に対して平壌の消息筋は、「保衛省が強制力を動員してドルを稼ぐなら、労働党は愛国者証を売ってドルを稼ぐ」と揶揄しているという。

金正恩党委員長は、ことあるごとに自国の社会主義体制を自画自賛するが、その実体は愛国心すら金儲けの手段になるほど、上から下までカネが物を言う社会になっているのだ。