性的虐待など助長…中国政府の摘発強化で脱北者数が減少

金正恩氏(朝鮮中央通信)

韓国統一省が3日に明らかにしたところでは、今年1月から8月末までに韓国入りした脱北者は780人で、前年同期比12.7%減少した。性別では83%が女性だった。

2011年末に金正恩(キム・ジョンウン)体制が発足して以降、韓国に入国する脱北者の数は減少傾向にあったが、昨年は前年比11%の増加を見せた。

それが再びマイナスに転じたことで、中長期の減少傾向がむしろ浮き彫りになった形だ。

韓国入りした脱北者の数は2009年の2914人がピークで、それ以降は北朝鮮当局が取り締まりを大幅に強化。とくに、2011年(2706人)から2012年(1502人)にかけての落ち込みが大きく、脱北者に対する金正恩体制の厳しい姿勢が垣間見える。その後も年間1200人から1500人程度で推移している。

2015年末には中国との国境地帯に高圧電線が設置されたほか、脱北を試みた者が赦免の対象から除外されるなど、取り締まりがいっそう厳しくなったとされる。

昨年、一時的に増加に転じたのは、海外に駐在する外交官や、中国で働く北朝鮮レストラン従業員らの亡命が相次いだことが大きかったようだ。

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一方、今年に入ってからの減少には、中国政府による摘発強化が影響しているものと思われる。たとえば8月2日には吉林省の吉林駅で脱北者7人が、14日には河北省の秦皇島市内で脱北者5人が逮捕された。いずれも車に乗って移動中だった。

中国政府は、摘発した脱北者を北朝鮮に強制送還する方針を取り続けており、そのため間接的ながら、北朝鮮の人権侵害を助長する結果を生んでいる。

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とくに脱北に失敗して送還された女性に対する北朝鮮当局の取り調べは、性的虐待の温床になっている。

(参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

中国政府が脱北者を強制送還するのは、金正恩体制が内部から動揺するのを防ぐためだ。金正恩党委員長が核兵器を作ろうが何をしようが、北朝鮮の現体制を支えるという点で、中国政府の方針は一貫している。

しかし、金正恩氏が米国などとの対話に関心を示さない現状を踏まえれば、北朝鮮で大きな内部変化が起きずして、朝鮮半島の非核化は難しい。

脱北者の人権問題は、今や北東アジアの安全保障と直結しているのである。