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金正恩氏が人知れず作り続ける「ヤバい」シロモノ

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

米ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」は27日、北朝鮮が2015年後半から稼働を停止している寧辺(ニョンビョン)の再処理施設で、核兵器の原料となるプルトニウム抽出の作業を再開した可能性があるとの分析を発表した。

女学生パーティー狂い

同サイトは今月22日に撮影された衛星写真を分析。従来ならこの時期には凍っているはずの施設周辺の川が、凍結していないことがわかった。そこから、施設を稼働した場合に使う冷却水が温まって川に流れ出た可能性が認められるという。

施設が現在、どの程度の出力で稼働しているかは不明だが、本格稼働に向けた動きは昨年から見られていた。同サイトは昨年10月以降に撮影された衛星写真も分析しており、施設周辺で複数の車両の動きがあったと指摘。昨年12月には施設から川につながる水路がさらわれ、施設屋上の雪がなくなっていたことから、再開に向けた準備を進めている可能性があるとの見方を示していた。

北朝鮮は昨年秋から、核実験や中・長距離の弾道ミサイルの発射を控えている。10月には中居地弾道ミサイル・ムスダンの発射に失敗したとの観測もあるが、11月以降は目立った動きが見られなくなった。

開発スケジュールの都合もあるだろうが、韓国政治の混乱と、米国のトランプ新政権の出方を様子見している部分が大きいように思われる。もしかしたら今後もしばらくは、このような状態が続くかもしれない。

しかしそれは、北朝鮮の核・ミサイル開発が停止していることを意味するわけではない。その間にも着々と、核兵器の原料となるプルトニウムと高濃縮ウランの増産が続くはずだ。北朝鮮が数年後に、数十発以上の潜在核戦力を備えているという事態は、大いにあり得ることなのだ。

北朝鮮の金正恩党委員長にしてみれば、自分に対する人権問題などでの責任追及は、もはや絶対に終わらないように感じられているのではないか。そうである以上、彼の方にも核開発を止める理由がない。

一方、国際社会の側には、それを止める決定的なカードが欠けている。正恩氏が、ときに女学生も動員されるパーティー狂いで健康不安を抱えているという情報に、期待をかけてみたくなるほどだ。

(参考記事:金正恩氏の秘密パーティーに呼ばれる「名門女学生たち」の涙

それでも少し前までは、米韓軍部に「金正恩斬首」の機運があうんの呼吸で醸成されるなど、問題の核心に突き進もうとする動きがあった。

(参考記事:米軍の「先制攻撃」を予言!? 金正恩氏が恐れる「影のCIA」報告書

しかしそれも、トランプ政権の誕生でどうなるかわからなくなった。手をこまねいていては、正恩氏が時間を味方につけてしまうこともあり得るのだ。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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