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「金正恩だって違法薬物をやっている」中毒者の噂で権威失墜

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏

北朝鮮で違法薬物のまん延がいっそう深刻化し、とくに若者世代の汚染が進んでいる模様だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が3日、最近脱北した人物の証言として伝えた。

北朝鮮で密造・密売されている薬物は主に2種類で、ひとつはアヘン、もうひとつが覚せい剤である。

(参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

女子中学校を一斉捜査

インターネットで検索すれば、昔のアヘン中毒者たちの写真を数多く見ることができる。目からは生気が失せ、骨と皮だけになった人々の退廃した姿を収めたものだ。北朝鮮でもまた、そうした光景が広がっているという。RFAの証言者は、次のように語っている。

「人々が、少しおカネが入ると麻薬(アヘン)を買い求めて、吸引しては働く意欲を失い、それでいっそう麻薬に頼るようになっているんです。脱北して韓国に逃れた家族が故郷に送金しても、食べ物を減らしてまで麻薬に使ってしまう。政府としても頭を抱えていて、見せしめのため、毎月2人ずつ公開処刑しています」

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

さらには、北朝鮮の中毒者たちの間では、次のような噂がささやかれているという。

「金正恩も、麻薬を相当やっている。しかも、よく精製されたものをやっているから、すっかり気分がよくなり食欲も出るので、体重をコントロールできなくなっている」

さすがに、これは根拠のない妄想だろうが、こんな噂が野放しになるようでは、最高指導者の権威もへったくれもない。

また、「これまで薬物に手を出してこなかった年長者たちは、その害悪を目撃しているので自制が効くものの、若者たちはあまりに塗れてしまっている」という。

こうした証言は以前から出ており、とくに覚せい剤は若者たちの間で、誕生日プレゼントにもなっている。2011年1月、ある女子中学校で一斉取締りが行われたほどだ。

では、このような事態に金正恩体制がどのような対策を取っているかといえば、前述のように、公開処刑などの厳罰で臨んでいるだけだ。しかし、ある常用者がかつて、デイリーNKの取材に答えて言っている。

「こんなに大勢がやっているのに、いくら取り締まりをしたところで無駄だ。我々全員を処刑することも、刑務所送りにすることも出来はしない。幹部も出勤前にキメているというのに、どうして庶民はダメなのか。1回キメれば、生活の苦労も忘れ、気持ちがいい。こんな世知辛い世の中、覚せい剤なしでは生きていけない」

金正恩氏がまともに国を治める気があるのなら、この現状を変えるために命をかけてみてはどうか。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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