北朝鮮「工作機関」の大物幹部が亡命…背景に「粛清の嵐」

金正恩氏

北朝鮮で韓国に対する工作部門に所属していた大佐が昨年、韓国に亡命していたことが、韓国・聯合ニュースの報道で明らかになった。

亡命したのは、北朝鮮の工作機関・偵察総局に勤務していた大佐。特殊な任務を帯びているだけに一般的な軍人より地位は高いらしく、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の中将に相当する大物だという。これまでにも、朝鮮人民軍の将官の脱北情報が流れたことはあるが、韓国入りが確認された例はない。

昨年来、北朝鮮高官の脱北情報が相次いでいる。韓国の情報機関・国家情報院によると、昨年だけで20人が韓国入りしたという。その中には金正恩第1書記の統治資金を管理する朝鮮労働党39号室の幹部も含まれており、「ベンツ数十台分の資金を持って亡命した」(韓国紙記者)との話も聞かれる。

そうした資金の原資は、違法薬物や偽バイアグラなどの取引で貯め込まれた犯罪収益だ。金正恩ファミリーの贅沢や核・ミサイル開発を支えるためのカネなのだが、それがまんまと「ネコババ」されているわけだ。

北朝鮮が、そうした「秘密資金」づくりを始めたの数十年も前のことだ。それでも、幹部が大金を持って亡命するなどということは、かつてはなかった。金正恩時代になり、忠誠心が著しく低下していることの証左と言えるが、背景にあるのはやはり、手当たりしだいの幹部処刑だろう。

(参考記事:北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面

金正恩氏にしてみれば、恐怖心によって国家を厳しく統治しているつもりなのだろう。しかし若年の彼は、人々の気持ちを過度に委縮させることがどのような結果につながるか、理解できていないようだ。

北朝鮮のようにカネもモノも足りない環境下では、現場の責任者たちが様々な場面で機転をきかせ、あるいは英断を下すことなしに、社会は回って行かない。金正恩氏の恐怖政治が、どうにかこうにか回っている北朝鮮社会の歯車を、完全に狂わせてしまう可能性は低くないのだ。

部下たちがついていけないほどの為政者の「暴走」は、どこまで言っても「暴走」であり、統治とは言えない。統治なき金正恩体制は、果たしてどこまで命脈を保てるのだろうか。