来年、金正恩氏が「不都合な経歴」を公開か
北朝鮮が来年5月に予定している朝鮮労働党第7回大会で、金正恩第一書記の誕生日を記念日と定め、家族史も公開するのではないかとの観測が浮上している。
大阪生まれの元在日朝鮮人・高ヨンヒ氏を母に持つ金正恩氏にとって、その家族史は自らを神格化する上で「不都合な真実」に当たると見られてきた。
(参考記事:金正恩と大阪を結ぶ奇しき血脈(2)偶像化に立ちはだかる実母「高ヨンヒ」)
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮北部・慈江道(チャガンド)に在住する情報筋は、「2017年からは新暦の1月1日を正式な正月とし、同時に1月8日の金正恩氏の誕生日を『民族最大の名節』にした上で、旧正月は単なる休日になる」と語ったという。
今のところ、北朝鮮で「民族最大の名節」とされているのは、4月15日の太陽節(金日成氏の誕生日)と2月16日の光明星節(金正日氏の誕生日)だけだ。
朝鮮半島では、旧正月を盛大に祝う習慣があるが、これをそのままにしておくと金正恩氏の誕生日が盛り上がらなくなるおそれがあるため、旧正月を格下げして、新暦の正月を盛大に祝うほうがいいのではないかという議論が中央でなされたという。しかし、新暦の正月への移行は今まで何度も失敗している。
正恩氏の祖父・金日成氏は1967年に「旧正月は社会主義生活様式に相応しくない封建的残滓」として新暦の正月を祝うように指示したが、なかなか定着せず1989年に旧正月を復活させている。
また、2003年からは旧正月の連休も復活した。 ところが、金正恩氏は今年2015年から新正月をメインにする指示を下したが、住民からは不評だ。
(参考記事:正恩氏「金日成スタイル」踏襲のためわざわざ正月を新暦に 庶民は大迷惑)
一方、両江道(リャンガンド)の情報筋は、今まで金正恩氏の誕生日が祝日に指定できなかった理由について「家族史に問題があったからだ」と述べている。
中央政府では、ありとあらゆる手段を動員して、家族史の問題を整理し、国家主席や党総書記にふさわしい歴史を創作した可能性があるとも伝えた。つまり、最大限に美化した金正恩氏の「革命史」の教育を始める準備ができているということだ。
しかし家族史を公にする上で、母親が大阪・鶴橋の生まれ育ちであるという事実にどのように言及するのか、あるいはまったく違う「作り話」を発表するのか、大いに気になるところだ。