北朝鮮の農業改革でなぜか「学級崩壊」が起きるワケ
北朝鮮は長らく、農業政策において、農民が集団で農場を運営し、収穫物をすべて国に収める「集団農場制」をとってきた。しかし、それも近年になって変わりつつある。最近では、個人が割り当てられた耕作地を責任をもって管理し、収穫量に応じて作物を分配してもらえる「圃田担当制」が定着しつつある。
ところがそのことが、農村地帯の学校で「学級崩壊」を惹き起こしているという。何故、そんなことになるのか。原因は、北朝鮮のいびつな農業政策にある。
北朝鮮には、「農村支援」という言葉がある。都会で働く人々が、春になると農作業に動員され、集団で地方に派遣されるのだ。一見、農村にメリットがありそうに思えるが、実はそうとも言えない。せっかくできた収穫物の多くが、秋には都市住民への「分け前」として当局に取り上げられてしまうからだ。
そもそも、北朝鮮の農場幹部はノルマ未達成の責任を逃れるため、収穫を過大に報告することが多い。そうなると当然、都市住民への分け前や軍への供出分も多めに指示されるので、農民の取り分はいっそう減ってしまうのだ。それにより時には、軍と農場が衝突を起こす事態にまで発展している。
さらに、いやいや動員された人々は怠けてばかりで使いものにならないなど、農民の立場からすると非常に使い勝手が悪い仕組みだという。
それに業を煮やした農民たちは、農村支援者を受け入れず、少しでも自分たちの手元に残るものを増やすために、子供にまで個人耕作地での農作業を手伝わせているのだ。そのため、農作業のために学校にすら行けない子供が続出。朝鮮労働党や中央政府が調査に乗り出す事態にまで発展している。
今まで北朝鮮の子供達は、国の制度に守られて学校教育を受けることができた。しかし、一年の農業生産が生死を左右する状況において、親が子供を学校にやらず、労働力として活用しようとするのは仕方ない部分もある。
北朝鮮も、市場経済化の過程において多くの国が経験してきた「いつか来た道」をたどっているのだ。