父親の7倍ペースで幹部を処刑……金正恩氏は北朝鮮の「虐殺王」となるか
韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は9日、ソウル市内で開かれた討論会で、北朝鮮の金正恩政権が発足から3年半の間に約70人を処刑したと述べた。
父親である金正日総書記の執権時には、同期間における処刑は約10人で、現在はその7倍のペースで「虐殺」が進行していることになる。
こうした恐怖政治に耐えきれず、軍や党の高位幹部らが相次いで脱北する異例の事態が発生していることについては、これまでも指摘してきた通りだ。
もっとも、金正日氏とて心やさしい指導者であったわけではない。
有名なのが、1990年代後半に起きた「深化組事件」だ。スパイの汚名を着せられた高級幹部ら2万5000人が、電気拷問、氷拷問、そして下剤を飲まさせた上で3日間、水を一滴も与えないなどの凄惨な拷問を受けた末に、処刑または追放された事件である。
また、金正日氏は労働者階級に対しても情け容赦なかった。未曾有の食糧難「苦難の行軍」の真っ只中にあった1998年。黄海(ファンヘ)製鉄所の幹部らが集まり、10万人近い従業員のための食料をいかにして調達するかを議論していた。
出された結論は、製鉄所で製造している圧延鉄板を中国に輸出してトウモロコシと交換するというもの。彼らは中央に報告せず事を進めることにした。報告したところで、圧延鉄板は軍需用という理由で輸出が許可されないことが明らかだったからだ。
製鉄所所有の漁船は圧延鉄板を載せて中国に向かった。副支配人や販売課長など幹部が船に乗り込んで、中国との交渉に当たった。その結果、船は大量のトウモロコシを積んで戻ってくることができた。
ところが、港に着いた瞬間に幹部、乗組員全員が朝鮮人民軍の防諜機関である保衛指令部に逮捕されてしまった。
この幹部らが全員処刑されたのは言うまでもないが、凄惨なのはそこからだった。当局は抗議の声を上げた労働者たちを、戦車のキャタピラでことごとく轢き殺したのだ。
しかし、こんなことがあったにも関わらず、北朝鮮の人々(とくに幹部たち)は今、「正恩氏の暴走を恐れるあまり金正日氏の治世を懐かしんでいる」(ある脱北者)ほどだという。
もはや何でもアリと化した金正恩体制に、どのようにしてブレーキをかけるべきだろうか。