「総連は右傾化して日本世論を味方につけよ!」…金正日氏が下していた幻の極秘司令
金正恩氏は25日、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の結成60周年に際し、「偉大な金正日同志の意を体して在日朝鮮人運動の新たな全盛期を開いていこう」と題した書簡を送った。
こうした書簡は朝鮮総連の組織内で「労作」「マルスム(お言葉)」などと呼ばれて、今後の活動方針の指針となる。
前回は1995年の結成40周年の際に、金正日氏が「在日朝鮮人運動を新たな高い段階へと発展させるために」と題した書簡を送っている。朝鮮総連のOBによれば、「あのときは組織内で書簡の学習会が頻繁に行われ、ありとあらゆる文書に『書簡マルスムの精神を貫徹するために』といった文言が盛り込まれた」という。
朝鮮総連は今回も、正恩氏の「書簡マルスム」に対する学習会を行うのだろうが、それが昔のように熱のこもったものになるかは疑問だ。書かれているメッセージにまったく新味がなく、内容がきわめて平板なのである。
まさにタイトルの通り「金正恩同志の教えを守れ」という、父親に丸投げしただけのものなのだ。
それに比べ、金正日氏の書簡には良くも悪くも独創性があった。1995年の「書簡マルスム」は、ひとことで言うと「朝鮮総連はマーケティング志向を持て」というものだった。朝鮮総連は長らく、祖国の威光を背景に、一般の在日朝鮮人を「指導」するかのようなスタイルで活動を行ってきた。正日氏は、「そんなことだから会員が離れて行くのだ。時代は変わった。在日同胞の利害を良く汲んだ組織運営をせよ」と言っているのである。
そんな「正日センス」の真骨頂が、1999年4月20日に下していた極秘司令である。
朝鮮総連の内部で「4月20日マルスム」と呼ばれるこの指令の中で、正日氏は「総連は共和国の旗を掲げたからといって、左傾的になるばかりではだめだ」「右傾化しても構わない」「事業方法を転換すれば祖国の諸々の機関が非難を浴びせるだろうが、聞こえないふりをして耐えよ」などの大胆な方針を示してる。
これは、日本の世論に食い込むために「偽装転向しろ」と言っているも同然だ。
この指令は、ほどなく外部に漏れたことで撤回されたようだが、いずれにしても、正日氏の朝鮮総連に対する関心の強さをうかがわせるものと言える。
しかし今や、正恩氏にそうした姿勢はうかがえない。
朝鮮総連の許宗萬議長ですら「祖国は変わってしまった」と嘆息しているというのだから、朝鮮総連と北朝鮮本国の縁は、相当に薄い物になっていると見るべきだろう。